ノウハウの「見える化」で、低コスト再造林を加速! 森林調査を変える革新ツールに迫る
2020/10/09
アドイン研究所の森林3次元計測システムOWL(アウル)。間伐の現場で活躍するツールだが、再造林の低コスト化にも応用できるという。開発責任者である塩沢恵子さんにお話を伺った。
作業道の作設から
支援を行う
「森林調査を変える革新ツール」として50以上の事業体で導入されているOWL。最大の特徴は精度の高さだ。森林の内側からスキャンを行うことで、ドローンなどによるリモートセンシングよりも詳細に林内の情報を取得できる。扱いやすさも魅力のひとつで、計測地点に立ち、ボタンを押すと、1地点あたり45秒でスキャンが完了する。では再造林の低コスト化にOWLはどのように役立つのだろう。
「まず試してほしいのはオプションの作業道作設支援ソフト。計測データをもとに再現した3Dの林内で、作業道の作設をシミュレーションできます」と塩沢さん。
土工量や延長だけでなく、支障木の位置や材積も即座に把握。縦断面図/横断面図の出力も可能。
低コスト再造林のポイントとなる一貫作業システムを実施するには、堅牢な作業道の作設が欠かせない。さまざまな作設パターンを机上でシミュレーションできる同ソフトは、そのための強い味方となる。経験の浅いプランナーに、作業道づくりのノウハウを共有する際にも力を発揮するはずだ。
森づくりをトータルで
シミュレーション
6月に最新版へ実装された「間伐木の3次元点群除去」機能も低コスト再造林に生かせるだろう。
「今回のアップデートで、間伐によって林内がどのように変化するかを見える化できるようになりました。利用者様からは、所有者への施業計画の説明がスムーズになったと好評です。現在は収入間伐のシミュレーションに使われることが主ですが、これからはぜひ保育間伐の段階から活用してほしいですね」と塩沢さんは提案する。
間伐シミュレーター。間伐実施後の森林の様子を3D上で再現。間伐率や搬出材積も同時に算出される。
間伐後の林内を視覚的に把握できれば、保育間伐の要否も検討しやすくなる。樹高や胸高直径、曲がりなどのパラメーターでフィルタリングできるので、間伐対象木の選定にも無駄がなくなりそうだ。育林コストの削減が期待できる。
立木の資産価値を推定する「採材計画ソフト」も、再造林を考える上で重要なツールになるだろう。
「皆伐によって得られる収入が少ないようであれば、再造林の必要がない非皆伐施業を選ぶなど、森林ごとに最適な施業方法を選択するための助けとなるはずです」。
いずれはOWLに蓄積されたデータを分析し、森林の成長予測も可能にしたいという。再造林によって森がどのように育っていくのかを予測できれば、より適切な施業計画を立てられるようになる。
「森林の情報だけでなく、作業道の作設や施業計画の立て方など、林業のあらゆるノウハウを見える化したいんです。健全な林業経営をバックアップするツールとして、さらなる進化をめざしたいですね」。
DATA
本体重量:3.7kg
本体長さ:約1900mm(移動時:約1000㎜)
計測時間:1地点45秒間(標準地20m×20mの場合、9地点計測で所要時間は10分程度)
解析時間:9地点データで5分程度(推奨PC仕様による)
問い合わせ
株式会社アドイン研究所
TEL:03-3288-7835
文:松田敦
FOREST JOURNAL vol.5(2020年秋号)より転載
Sponsored by 株式会社アドイン研究所