林業を変える6つの技術にフォーカス!農林水産省が公開した「新技術カタログ」に注目
2020/05/20
4月23日に農林水産省が公開した「農林水産業の作業安全対策に資する新技術カタログ」のなかから、林業分野の新技術を紹介。いずれも林業を安全な仕事へと変える技術として注目が集まる。
無線端末によって、
事故の早期発見を
まず取り上げられているのはプラムシステムが開発した「騒音環境下作業者の緊急伝達装置」、通称キツツキハンマーだ。
同装置は搭載されたジャイロセンサーが装着者の転倒や滑落を探知。920MHz無線で自動的に仲間へとSOS信号を送る。SOSを受信すると仲間のヘルメットに装着された子機が振動。騒音化でも仲間の事故に気づくことができる。通信距離は約1000m。
株式会社フォレストシーの無線端末『Geo Chat(ジオチャット)』も、三軸加速度センサーを搭載することで落下・転倒時などの自動SOSを可能にした。
またスマートフォンとBluetoothで接続し、携帯圏外においてもグループ間のチャットコミュニケーションを可能にする。作業の安全と効率化を叶える端末として、全国の自治体・森林組合への提供が始まっている。
林業機械の遠隔操作、
自動運転が可能に
林業機械の分野ではまず、松本システムエンジニアリング株式会社のラジコン式伐倒作業車「ラプトル」が取り上げられている。
急傾斜地での立木の伐倒と搬出を遠隔操作で可能にする夢の一台だ。無線の通信距離は最大100m。操縦者はコントローラーのカメラモニターによって、リアルタイムで作業を確認できる。
さらに搬出と自動化に特化したのが、森林総合研究所が開発した「自動走行フォワーダ」だ。
作業道の往復だけでなく、土場での荷下ろし作業も自動化。スイッチバックが必要な作業道にも対応し、有人での運転時と同等の能率を実現した。数年後の製品化を目指して、実証試験を重ねている。
AIやVRといった
先端技術の活用も
東京大学が開発したのはGPSセンサー・加速度センサー・ジャイロセンサーなどを搭載した「スマート・チェンソー」だ。
作業時の位置情報、機体の姿勢変化、機体に加わる衝撃などを自動的に測定・記録してくれる。将来的には危険な作業の検知をはじめ、チェーンソー作業の最適化を促すAIガイドシステムの構築を目指す。
株式会社森林環境リアライズはバーチャルリアリティ(VR)を活用し、疑似「体験・体感」する「林業労働災害VR体験シミュレーター」を開発。
現在は、蔓がらみ処理に伴う災害など8つの労働災害を体験できる。体験できる労働災害は今後も随時追加されていく予定だ。
林業従事者の安全をいかに守るか。それを真剣に考える事業体であれば、いずれも一度は目を通してもらいたい新技術だ。
DATA
文:松田敦