最新【森林・林業白書】押さえたい動向をナナメヨミ! 国内林業の現在は?
2023/10/30
林野庁のホームページで閲覧できる「森林・林業白書」は、林業に関わる人が知っておきたい情報が満載の“虎の巻”。2023年度版から、フォレストジャーナル編集部が押えておきたいトピックをセレクト。
TOPIC 1
データでざっくり知っておく
国内林業のコト
国産材の生産量・木材自給率の上昇など、
回復傾向にアリ
長期にわたり木材価格の下落などの厳しい状況が続いてきた国内林業だが、近年は国産材の生産量の増加、木材自給率の上昇など、回復の兆しをみせている。
とくに2021年の林業産出額は、前年比13%増の5457億円、その約6割を占める木材生産は、前年比の32%増の3254億円と、ここ20年で最高の水準に。スギ・ヒノキ・マツの山元立木価格も2022年3月末時点で上昇している。
これは、丸太輸出や木質バイオマス発電などの新たな木材需要の増加や、2021年は輸入木材の不足により国産材の需要が高まったことなどが背景にある。
林業ワーカー数は横ばいだが、
ナント若返り傾向!
国内林業は活力を回復しつつあるが、働く現場はどうか?
2020年の林業従事者数は約4.4万人で、2015年から横ばいで推移。また、若年者率は全産業で低下しているなか、林業従事者は横ばい状態をキープしている。
働く人の平均年齢も2005年の54.4歳から2020年には52.1歳まで下がっており、林業界で働く人たちが若返り傾向にある。
給料面でも変化が!
林野庁の目標は?
気になる給料面はどうだろうか?
年間平均給料は、2013年の305万円から2017年の343万円と12%上昇しているが、全産業平均に比べると、100万円程度低い状況にある。一方で、年間就業日数210日以上の雇用労働者の割合は上昇しており、社会保険等加入割合も増加。
林野庁では、森林組合の雇用労働者の年間就業日数210日以上の者の割合を2025年度までに77%まで引き上げることを目標としており、よりよい環境が整えられつつある。
給料アップ、労働条件の改善を実現するには、とにもかくにも経営体の収益向上が不可欠。
こうした林業経営の効率化のキーワードとなるのが、複数の所有者の森林を取りまとめ、路網整備や間伐などの森林施業を一体化して行う「施業の集約化」。もうひとつは、育成期間が短いエリートツリーや自動化林業の導入など、新技術を活用した「新しい林業」。
この2つは引き続き、未来の林業に欠かせないワード。ぜひ覚えてこう。
●1林家当たりの保有山林面積は増でも…
林家約69万戸のうち保有山林面積が10ha未満の林家が88%と、小規模・零細な所有構造になっている
●民間事業体や森林組合が主力
林業経営体による素材生産量の約8割は森林所有者からの受託や立木買い。また、民間事業体や森林組合が素材生産全体の約8割を担う
●林業経営の効率化を担う人材
施業集約化を担う「森林施業プランナー」の認定者は2323名、施業集約化に加え木材の有利販売等により持続的な経営を実践する「森林経営プランナー」は113名
●林業でも女性活躍
林業に従事する女性は2730人(2020年)。近年、林業の機械化等により女性活躍の場が増加。女性が働きやすい環境を整える取組を推進
TOPIC 2
国有林をオープンに
地域林業の強化に
2022年から本格的に始動した「樹木採取権制度」。国有林野の一定の区域の樹木を民間事業者が一定期間で安定的に採取できる制度だ。
区域面積は200~300ha程度(皆伐相当)、権利存続期間10年程度を基本とした8ヶ所の樹木採取区において、公募で選ばれた樹木採取権者が伐採などの事業を順次行っている。
国有林の新たな活路を広げることで地域林業を強化し、川上から川中・川下の事業者の連携による木材需要の新たな開拓につなげる狙いだ。
すでに現場では「安定的な事業地の確保により経営の見通しが立てやすくなり、雇用の拡大や高性能林業機械の導入につながる」、樹木採取権者と協定を結んだ川中の事業者からは「安定的な原料調達が見込める」などの声があがっている。
今後は、製材工場の新増設など木材需要増加の確実性が高い地域は、新たに樹木採取区が設定されることもありそうだ。
DATA
文/後藤あや子
FOREST JOURNAL vol.17(2023年秋号)より転載