地方自治体からの異論多数! 初配分された森林環境譲与税の配分基準
2019/12/25
総務省は9月30日に森林環境譲与税を地方自治体に初めて割り当てた。総額100億円を森林面積や人口などに応じ、配分する新たな試みだ。しかし、一部地方自治体から大都市が受ける多額の配分金に異論が出ている。異論が出ている背景を追いかけてみた。
市町村別の配分金1位は横浜市
2位以下も大都市が続く
森林環境譲与税の地方自治体への配分は、今年度から実施された地方交付金の一部。配分される原資は特別会計の借金から今年度は当てられている。今後は2024年度から新たに個人住民税に上乗せされる森林環境税が原資になる。
森林環境譲与税は森林の間伐や林業の担い手の確保、木材の活用推進などを目的に創設され、森林の管理、運営を早める意味で今年度は特別会計から支出された。
今年度、最も多く配分された市町村は横浜市(約7104万円)、ついで浜松市(約6067万円)、大阪市(約5480万円)が続く。上位の市町村は政令指定都市で、人口も多い大都市に多額の支給がなされている。
都道府県別で見てみるとどうか?
都道府県別で見てみると、最も多い金額を受け取った北海道が7600万円、次いで東京都が3600万円、高知県、岐阜県と続く。
一方もっとも少額の交付金を受け取ったのは香川県の390万円で、北海道と比べると20倍以上の差になっている。
10位以内に東京、愛知といった人口の多い大都市を抱える都道府県が入っていることも注目したい。
21年度までは各年度、市町村分約160億、都道府県分40億が9月と翌年の3月の2回に分けて譲与されることが決定した。
譲与金額の総額については年を追う度に増額される予定だが、異論の声が上がっているのは譲与税の総額ではなく、その配分比率の計算方法だ。
配分金額に大きな差が出た理由
大都市圏に多額の給付がなされたのには理由がある。総務省は給付金の割合を森林面積や人口などに応じて分け、内訳は5割を「私有の人工林面積」、3割を「人口」、2割を「林業就業者数」とする基準に則っているためだ。
横浜市に多額の支給が配分されたのには同市には私有の森林が多いことに加え、人口の多さ、市を挙げてのSDGs事業の取り組みで林業就業者も集まったことが考えられる。
しかし、現行の比率で支給配分に差が出ることについては秋田県や山形県などの過疎地域を抱える自治体から批判の声も上がっている。
確かに林業が盛んな自治体は、森林所有者が個人ではなく団体や企業であることも多い。横浜市のように個人所有の森林は数えるほどしかないのが実態であり、人口も少ない。
担い手不足の解消や木材の活用推進などを目的に創設された交付金だけに、大都市が優遇される結果に不満を抱くのもよく分かる。
総務省は地方自治体から問題視されている譲与税の配分内訳について、現時点ではコメントしていない。来年度以降も同様の配分比率を用いるなら、批判の声はさらに大きくなるだろう。
DATE
総務省 報道資料 令和元年度9月期における地方譲与税譲与金の譲与
Text:岩田武