新たな法律は日本の森林を破壊する? 林業事業者からは懸念の声も
2019/12/03
「森林経営管理法」が施行され、この制度を円滑に機能させるため、令和元年に法律が新たに可決、成立した。その法律が森林事業者へ与える影響と変化はどのようなものなのか。
法律を読み解く
令和元年6月5日「国有林の管理運営に関する法律等の一部を改正する法律」が可決、成立した。この法律は、国有林の一定区域内の樹木を、一定期間安定的に伐採できる権利を林業経営者に設定できるようにするものだ。
しかし、このまま法律が施行されてしまうと、森林事業者には大きな影響があるのではないかとの指摘をする専門家もいる。
では、実際にどのような疑問や不安の声があり、林野庁はどの様な回答をしているのか、まとめてみた。
樹木採取区は、その面積を一度で伐採するものではない、一度あたりの伐採規模は従来と同じ。
国有林は公益機能の発揮を第一に管理運営され、原則として一箇所あたりの皆伐上限面積を5ヘクタール以内と定めている。樹木採取区の伐採上限もこの面積で定めているため、一度で皆伐されてしまうことはない。
また、国有林は森林機能に応じてゾーニングされ、ゾーニングに応じた森林の取り扱いもルール化される。事業者はそのルールに従わなければならないので国有林をむやみに伐採は出来ないとされている。
権利の期間は10年を基本とし、国が5年ごとの契約の際に伐採計画等の内容をチェックする。
権限の期間を10年と設けているが、国産材の需要拡大ニーズが特に大きい地域ではこの期間を延長することもある。しかし、権利者は5年ごとに5年間の伐採計画などを出さなければ国との契約が結べない。
努力義務ではなく事業者としての義務を課しており、5年ごとに国が事業内容をチェックする。そのため、国有林のルールに則した適切な伐採の実施が保証されている。
国有林の造林は、国が責任を持って行っており、今後もそれは変わりない。
造林の義務は国が責任を負うとしている。なお、国が行う造林は民間業者に作業を委託して行っている。
一方、再造林を低コストに行うために、伐採を行った樹木権利者に植栽作業も併せて行うよう「申し入れる」規定を設け一貫作業を確実に行える仕組みを整えたのだ。
この法律に対する疑問と回答については、ページ下部にある林野庁HPを参考にしてもらいたい。
大規模採取は
大企業向けの法案?
今回の法改定の最大の目的は地域の森林事業者を応援する仕組みを作ること。林野庁HPでそれを表明しているため、相当本気だと読めるだろう。
樹木採取権の設定には、雇用の拡大、事業所の有無、事業実績など、企業のその地域への貢献度が設定の条件とされており、投資目的の採取権の取得が出来ないようになっている。
また、木材の売り先も従来どおりの入札による販売を保つので、特定の業者が国有林の木材の伐採や販売を独占してしまうことはない。
法律が改正されて生じる変化
国有林は優良な木が植えられていることも多く、植林時期は高度成長期に当たるため、今ちょうど木材として販売できる大きさだ。採取権に面積規定があるとは言え、国の土地から採取して販売できる点は昨今の需要増に対応できる。
また、国有林の管理運営も任されるため林業経営者の雇用の増加、売上の増加を望める。
しかし、5ヵ年計画の計画書、管理運営と伐採の計画書など、採取権を得るまでの申請は煩雑である。そのため、木材の安定供給を支える林業経営者が、現在十分な伐採面積を持っていれば、国策としての法改正は空振りに終わってしまうだろう。この先の改定内容などに引き続き注目したい。
DATA
Text:岩田武