「木質バイオマスビレッジ」に行ってみると!?【前編】小さなむらの村長の想いとは
2023/01/30
東京から車で約2時間、群馬の最南端に位置する上野村。総面積の9割以上という恵まれた森林資源を活かし、約10年前から木質バイオマスエネルギーの地産地消を実現。小さな村から発信する先進的な取り組みを紹介!
メイン画像:上野村情報産業センターの石井貴裕さん、上野村役場振興課の佐藤伸さん
「山主に利益を還元したい」
村長の想いからスタート
人口およそ1100人の上野村は、標高1000~2000mの急峻な山々に囲まれた山岳地帯の村だ。
過疎化を食い止めるため、1965年から40年にわたり任期を務めた黒澤丈夫村長みずからリーダシップをとり、森林資源を活かす地方創生をいち早く行っていた自治体である。その50年の努力が実り、近年はIターン移住者が人口の約2割近くを占めている。
木質バイオマスに取り組むきっかけは、2009~2017年の任期を務めた神田強平村長の「山主に利益を還元したい」という想いから。
村役場出身の神田氏は、まずは林業の6次化に着手。村が補助金から機械貸出、作業道整備、森林整備計画まで搬出間伐を支援し、間伐材などを有効活用するため、2011年に木質ペレット製造工場を稼働させた。
2011年に1棟目の製造工場が竣工し、2019年に2棟目が完成。今後はペレットよりも費用対効果が高い木質チップの生産計画もある。
上野村役場振興課の佐藤伸さんはこう語る。「現在の木質ペレットの生産量は、年間約1300t。そのうちの約半分が村内のボイラーやストーブの燃料で使用されています。
当初、温泉施設と宿泊施設の3ケ所のみだった木質ペレットボイラーが、今は生活福祉センターや中学校、単身用集合住宅、農業用いちごハウスと増えて、その数は国内の自治体でもトップクラスだと思います」。
IT企業出身の佐藤さんは27年前に横浜からIターン移住。上野村森林組合にも勤め、村のバイオマス事業を長年見守ってきた人物だ。
森林割合の6割を占める
豊かな広葉樹を活用
急峻な山が多い上野村は戦後の植林が進まず、針葉樹よりも広葉樹が多いのが特徴で、木質ペレットは、カラマツや杉などの針葉樹と広葉樹などの未利用材が使われる。森林資源確保のため25年の長期素材生産計画を立てている。
左が広葉樹、右が針葉樹。半年以上寝かせて乾燥させた後、細かく粉砕してペレットになる。
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ペレットは10㎏420円と他と比べて割安。村内で使うのが目的なので値段を抑えている。コロナ禍で木質ペレットボイラー利用の宿泊施設が営業を縮小したため、県内の四万温泉など村外の販売を始めた。
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教えてくれた人
上野村情報産業センター
石井貴裕さん
上野村役場振興課
佐藤伸さん
左:石井さん、右:佐藤さん
バイオマスツアーは上野村ホームページから受付。上野村は山岳サイクリストの聖地といわれ、自転車好きな石井さんも高崎市から移住。
取材・文/後藤あや子