注目キーワード

エコ・地域づくり

【座談会】檜原村移住組の共同代表に聞いた! “山のシェア”の森林活用のヒケツとは?

「MOKKI NO MORI」は、林業家が整備した森の会員制アウトドア森林フィールド。新しい森林サービス“山のシェア”とは一体? 檜原村移住組でモッキノモリ共同代表の3人に、話をうかがった。

 

檜原村移住組3人のスペシャリスト
= MOKKI NO MORI の共同代表!

デザインディレクター

清田直博さん

福岡県生まれ。クリエイティブの現場で経験を積む傍ら、ファーマーズマーケットの運営に関わるなかで農業に興味を持ち、2016年に檜原村に移住。山間地で持続可能な農業の在り方を探るため、仲間と「檜原村新農業組合」を組織。農業体験やワークショップ、商品開発を行っている。


自然体験イベンター

渡部(わたなべ)由佳さん

自然体験イベントを企画するOSOTOの代表取締役社長兼カメラマン。行政書士として監査法人の法務コンサルタントを経て、現職に。「我が子にさせたい自然体験とは?」をテーマにプログラムを手がける。親子向けイベント「地球の学校」のほか、リスク管理のコンサル経験を活かし、危機管理のマニュアル作りを担当。


林業家

青木亮輔さん

東京チェンソーズの代表取締役。東京農業大学林学科卒後、1年間の会社勤めの後、「地下足袋を履いた仕事がしたい」と、林業の世界へ。檜原村木材産業協同組合代表理事。檜原村林業研究グループ「やまびこ会」役員、TOKYO WOOD普及協会専務理事など、さまざまな分野で活躍する。

山・森をシェアする
仕組みづくり

――プロジェクトのきっかけは何ですか?

渡部 畑を共有するシェア畑が流行っているけど、シェア森やシェア山はない。それならそういう仕組みを作ろうというのが発端。

青木 国内に「山をシェアする」という施設がほとんどなく、立ち上げ時は、仕組みづくりがいちばん大変でした。

渡部 最初は山を区画して年間の賃貸契約をする計画でしたが、いざ蓋をあけたら急斜面だらけで区画できない(笑)。

青木 檜原村は急峻な山がほとんど。逆に言えば、檜原村で作れるなら全国どこでもできると思います。

渡部 そもそも私は、ここでコミュニティづくりをしたくて。地元でもない、会社でもない、週末に帰る集落みたいのもの、いわゆるサードプレイスです。いっその事、区画しなければ交流が生まれやすいのではと思い、区画せずにみんなで山全体をシェアする会員制にしようと。

――会員の方はどんな方が多いですか?

渡部 40〜50代のファミリーです。アウトドア初心者の方も多いですよ。私のママ友の会員さんは、家族と週末を過ごすことを目的で入会しました。

青木 当初は玄人しか来ないと思っていた(笑)。間口が狭まらないように、清田さんにバランスよくデザインしてもらって。

清田 当初から「キャンプ場」ではなく「会員制のアウトドア森林フィールド」にしようと決めていたよね。



意外とクールな利用者
森に通うことで、自分ごとに

――たしかに「風の縄文トイレ」や「年会費一括払い」は会員さんの覚悟が必要です。

渡部 だからこそ「私たちは1年間ここに通う」と腹を決め、冬でも来てくれる。年会費という設定でよかったです。

青木 “金曜に山に入って日曜に帰る”利用を想定しましたが、実際には連泊組が少なく、焚き火して3時間ほどで帰るデイキャンパーが多い。その方が楽だとか。

渡部 想定外でしたね。会員さんは私たちが考えているよりも使い方がクール。

――デイキャンだと初心者でも気軽で、通えば通うほどお得になる。コンセプトの「人が入ることでどんどん山が美しくなる」につながりますね。

青木 一般の人が定期的に森に通える仕組みを作ることが、森林サービス産業の大切な点だと思います。単発のイベントより、こうした山のサブスクの方が事業として成り立ちます。

渡部 林業のイベントはたくさんあるけど、森や山を“自分ごと”として感じてもらうには、継続的に通わないと分からない。

青木 現代人は山のつきあい方が分からない人が多い。ルールを明確化した山や森で過ごす人が増えれば、山がみんなの共有財産だった時代に戻れると思うな。

渡部 そもそも「山のシェア」は新しいというよりも、戦前の日本に戻る感覚だよね。

清田 シェフが農場を訪ねるように、ものづくりをしている人が森や山に足を運べる、学びの場にもなってほしい。

青木 オープンして半年、企業の福利厚生としての問い合せや山主さんからのオファーも来ています。

清田 山のシェアをやってみたい全国の事業体の方も、気軽にご相談してほしいですね!

 

長く続けていく森林活用のヒケツ
「森に通う」仕組みづくりをする。
人が継続して山林に入ることで山を身近に感じ、美しく保つことができる。便利にしすぎない場所づくりも大事。

 

DATA

MOKKI NO MORI(モッキノモリ)


MOKKIは北欧で「自然に帰る小屋」の意味。

東京都西多摩郡檜原村本宿697
会員費:
●シングル会員:110,000円/年(税込)
●ファミリー会員:132,000円/年(税込)


取材・文:後藤あや子
写真:村岡栄治



関連記事

林業機械&ソリューションLIST

アクセスランキング

  1. 【2023年版 大型チェンソー7選】メーカーに聞く「林業向け」機種、最適な1台は?...
  2. 【東京・四国】プロジェクトリーダー募集! SOLABLEフォレストで、未来の森林を一緒に作りませんか?...
  3. ベテランフォレスターが徹底比較! 現場目線で語るアイテム試着レビュー【ヘルメット編】...
  4. サーキュラーエコノミーの構築へ。少花粉スギ品種のBECCS育苗システム実証実験を開始。...
  5. 【森林・林業・環境機械展示実演会リポート②】環境機械を通じて森林バイオマスの利用促進に貢献...
  6. 天皇杯を受賞した樹苗生産者の三代目が挑む! 再造林率向上に貢献する黒字化経営...
  7. 【森林・林業・環境機械展示実演会リポート⑤】45度までの傾斜地を登坂するラジコン式伐倒作業車...
  8. ベテランフォレスターが徹底比較! 現場目線で語るアイテム試着レビュー【防護パンツ編】...
  9. トウガラシが山を救う!? 高効果&低コスト&環境低負荷の獣害対策アイテムとは?...
  10. 「稼げる林業の方程式」とは? 4人の林業家を通して見つけた重要ポイントを解説...

フリーマガジン

「FOREST JOURNAL」

vol.21|¥0
2024/9/30発行

お詫びと訂正

» Special thanks! 支援者さま一覧はこちら