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高齢化進む造林事業を“ビジネス”に! 苗づくりや植え方を吟味して取り組もう

林業とは、木の苗を植え育てて森をつくり、その最終段階として収穫(伐採)するものだ。そのために必要な造林苗や植え付け人員の確保が年々難しくなってきている。だが、裏返せば、苗づくり・造林事業はビジネスになるのだ。そこで重要になってくるものとは?

苗づくり・造林事業は
ビジネスになる

近年の林業、山仕事というと、どうしても「伐採」をイメージするようになった。森林組合から林業事業体、あるいは個人の請負仕事も素材生産が中心の仕事なのだ。

しかし林業とは、木の苗を植え育てて森をつくり、その最終段階として収穫(伐採)するものである。この循環全体が林業であり、森づくりを忘れて林業は成り立たない。とくに最近は皆伐が増えている。となると、伐採跡地に再造林することは至上課題だろう。そこで必要となるのが、造林苗の調達と植え付けだ。

近年は、林業苗を専門につくる農家(林家)は全国で1,000軒以下まで減り、しかも高齢化が進んでいる。苗木の生産量は、1960年度はざっと13億本だったのが、2013年度は約5,600万本だった。20分の1以下まで減少してしまった。そのため、再造林しようにも十分な苗を確保するのが難しい。また素材生産は機械化が進んだのに、造林事業は今も手作業の割合が高いため従事するのを忌避する作業員も少なくない。そのため植える人員の確保が難しくなっている。

だが、これを裏返せば、苗づくり・造林事業はビジネスになるということだ。実際、各地に植林や育林(下刈りなど)を専門に行う林業事業体が登場してきた。あるいは苗づくりに取り組みだした事業体も増えてきた。自社所有林に植える分だけでなく、販売するための苗生産を増やす企業もある。苗を植えて育てる作業には、森をつくる楽しみもある。また伐採専門だと、木材の品質がよくない季節にも伐らねばならなくなり、搬出した材の価値を下げてしまうことも起きる。だから植え付けや下刈り、伐採と作業を適した季節ごとに変えて行くことで旬を守って仕事を行えるのだという。



時代とともに動いていく
苗づくりや植え方も吟味を

そこで重要なのは、何の苗をつくるか(植えるか)、品種を選ぶことである。たとえば耐病性や耐寒性、耐暑性、あるいは材質と植える場所の条件のほか、将来的な目的も考えないといけない。国などでは、最近「エリートツリー」の苗づくりを進めている。とくに生長の早い品種をつくろうというのだ。

生長が早ければ収穫(伐採)までの期間を短縮できるだけでなく、植林本数を減らし、苗代や下刈り・間伐コストも抑えられる。獣害も受けにくい……と考えられるからだ。さらに花粉症対策として低花粉・無花粉のスギやヒノキ苗も求められている。さもないと造林補助を受けられないケースもある。どの苗を選ぶかは、需要を読みつつ地域の条件をよく考えていかねばならない。

なお、苗づくりには2つの方法がある。種子から育てる実生苗は、遺伝子に多様性があり形質に幅がある。挿し木苗はすべて母樹と同じ形質の樹木になる。また苗は、ある程度の距離以上を移動させてはいけないという規定もあるから、1ヶ所で栽培した苗を全国で販売することはできない。こうしたことも勘案すべきだろう。

一方で根を土で包んだ「コンテナ苗」も開発された。植える季節を問わないから、労働の平準化ができる。なおポット苗と違って根が広がって伸びることも特徴だ。このように苗づくりや植え方も、時代とともに動いている。そうした点を十分に吟味しつつ取り組むべきだろう。



PROFILE

森林ジャーナリスト

田中淳夫


静岡大学農学部林学科卒業後、出版社や新聞社勤務を経て独立し、森林ジャーナリストに。森林や林業をテーマに執筆活動を行う。主な著作に『森と日本人の1500年』(平凡社新書)、『森は怪しいワンダーランド』『絶望の林業』(新泉社)、『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』(築地書館)、『獣害列島 増えすぎた日本の野生動物たち』(イースト新書)など多数。奈良県在住。

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