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エコ・地域づくり

DIYユーザーの増加は林業界の変革を促す? 業界発展のために求められているものとは

働き方改革に加え新型コロナウィルス流行の影響で、いわゆる「おうち時間」が増える一方の昨今。DIY用品を扱うホームセンター(HC)はどこも活況で、木材の売れ行きも良いらしい。普通の生活者が日常的に木材を選び、購入する時代がやってきたのかもしれない。

新築木造住宅のユーザーは
人口の1%

一般ユーザーがDIYで利用する木材の需要量はおそらくまだ微々たるもので、工務店や大工などプロユーザーが建築に利用する木材の方が間違いなく圧倒的に多い。しかし、ユーザーの頭数がどうかという視点で見ると、DIY市場には大きな可能性がある。
 
住宅に関して言えば、新築の木造住宅に1年間にどのくらいの人が入居しているかを1世帯当たり平均人数(人口÷世帯数)に新築木造着工戸数を乗じて試算すると、昨年は「2.21人×52万3,319戸」という式により115万人余りという結果になる。これは全人口の0.93%に過ぎない。
※資料=総務省「住民基本台帳」、国土交通省「建築着工統計」
 
都道府県別に同じ計算をしても数字は大して変わらず、新築木造住宅の年間入居者数は人口の1%前後という結果になる。



「地域材」は身近な存在ではない

最近は構造分類上は「木造」でも、見えるところに木があまり使われていない家も多いから、住まい手のすべてが木材のユーザーになったと実感しているとは考えにくい。
 
増して使われている木材の種類を特定し、国産材さらには地域材と条件を狭めていけば、それらのユーザーとしての意識を抱いている人はごくわずかしかいないだろうと想像がつく。
 


木造住宅が「木の家」らしい建物とは限らない。木材のユーザーになったと実感している住まい手はどれだけいるのだろうか?

 
しかも、その人たちはしばらくはその家に住み続けるだろうから、すぐにはリピーターになってくれない。つまり、住宅は木材需要の主要な受け皿であるが、ユーザー数を増やす効果はそれほど期待できない。
 
林業界や木材業界が木を身近に感じてもらおうと、さまざまな働きかけをしていても、世間の反応が今ひとつ鈍いのには、こうした事情もあるのではないか。



ユーザーが増えれば
「世間の目」が身近になる

それに対して、DIYでの木材利用が日本社会に根付けば、需要量が爆発的に増えるというわけにはいかもしれないが、ユーザー数が大幅に増えることは期待できる
 
リピーターになってくれる可能性も住宅とは比較にならないほど高い。そうなれば木を好きになってもらったり、木材利用の意義を理解してもらったりするためのPR効果も上がり、世の中を動かす力を蓄えることにもつながる。
 
一方、世間の視線にさらされることへの自覚も必要になる。1990年代、世界的に環境問題への関心が高まる中で、熱帯林の破壊が問題視されるようになったとき、ヨーロッパでは熱帯産木材に対して市民主導の不買運動が起きた。
 
そうした社会情勢を背景に、持続可能な経営が確保された森林から生産される木材を識別するための「ラベリング」制度の必要性が議論されるようになり、FSCやPEFCといった森林認証制度の導入につながっていった。
 


ホームセンターの木材売り場。DIYの需要が増えれば、木材のユーザー数を増やす効果が期待できる。

 
ユーザーの数が増え、木材利用への関心が高まることは、林業界や木材業界にとって喜ばしいことに違いない。その一方で、自然環境そのものである森林と深く関わる立場として、襟を正さなければならない場面も当然増える。
 
違法伐採の可能性があるものでも目こぼししてもらおうなどという甘えは、ユーザーの意識が高まれば通らなくなる。木を身近に感じてくれるユーザーが増えるプラス効果を業界の発展につなげるための意識改革が求められている
 

PROFILE

林業ライター

赤堀楠雄


1963年生まれ、東京都出身。大学卒業後、10年余にわたる林業・木材業界新聞社勤務を経て99年よりフリーライターとしての活動を開始。現在は林業・ 木材分野の専門ライターとして全国の森や林業地に足を運ぶ。

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