北の大地についに出現! 北海道産木材を活用した国内初の高層ハイブリッド木造ホテル
2021/11/30
持続可能な木材利用に取り組む三菱地所グループの新ホテル「ザ ロイヤルパーク キャンバス 札幌大通公園」が今年10月誕生。構造材に使用する木材量は国内最大規模となる。
都会に北海道の森を感じる
ライフスタイルホテル
「北海道を体感する」をコンセプトに掲げた『ザ ロイヤルパーク キャンバス 札幌大通公園』が、札幌のランドマーク・大通公園のテレビ塔隣に今年10月1日にオープンした。
トドマツやカラマツ、タモといった北海道産木材を使った11階建のホテルは、1~7階がそのほとんどの天井を木質化した鉄筋コンクリート造、8階が鉄筋コンクリート・木造のハイブリット造、9~11階が純木造となるハイブリット木造建築の構造だ。
なかでも目をひくのはホテルの外装。1~11Fまで北海道産カラマツがルーバーとしてあしらわれ、都会にいながら北海道の森を感じさせてくれる。
そして3~6Fの客室にも注目したい。寝室の天井に北海道産トドマツがあしらわれているが、これは建設時にコンクリートの型枠として使った木材をリサイクルしたもので、まさにサステナブルなアイディア。
3~6階は北海道産トドマツを使った木の天井が採用されている。
ほかにも、道内でつくられた家具や木製のスピーカーなどが配置された全134部屋のゲストルーム、北海道産の食材にこだわったフレンチが味わえるレストランなど、空間から食まで“究極の地産地消”でもてなしてくれる。
客室には、ホテル外装の端材を再利用した木製のスピーカーが設置されている。
三菱地所グループが推進する
木造・木質建築物の成果を集約
このホテルを手掛けたのが、三菱地所グループの株式会社ロイヤルパークホテルズアンドリゾーツと三菱地所株式会社。三菱地所グループは、2050年に向けて目指す姿として「三菱地所グループのサステナビリティビジョン2050~Be the Ecosystem Engineers」を制定。
そのひとつが、国産材の活用を通じたサステナブルなものづくりの推進で、木材活用の場を広げる建材として「CLT」と呼ばれる直交集成材の活用を、国内でも先駆けて行っている。これまでにも構造屋根材に九州産スギのCLT材を使った「みやこ下地島空港ターミナル」(沖縄県宮古市)や、CLTを床材と壁材に使用した国内初の高層賃貸マンション「PARK WOOD 高森」(宮城県仙台市)などを竣工。ホテルでも木造×鉄筋コンクリートのハイブリット造の採用など、既存のプロジェクトで培った技術が活かされている。
さらに、さきほど文頭で紹介したホテル3~6Fの客室寝室の天井材は、三菱地所が開発・特許出願済みの新しい型枠材。通常廃材となる型枠材をそのまま天井の仕上げ材として利用することで、ローコストと環境配慮の実現が可能という。
道内人口林で最多のトドマツを
使用し、地元産業の振興に貢献
ホテルの構造躯体における木造使用量は、約1060㎡(外装材を含めると約1200㎡)で、その8割近くが北海道産木材だ。床材のCLTをはじめホテルのさまざまな箇所で、道内人工林で最も資源量が多いトドマツを採用しているのも大きな特徴で、地元産業の振興や持続可能な森林資源循環にも貢献している。
こうしたことからホテルの構造材に使用する木材量は国内最大規模で、建物全体を鉄筋コンクリート造とした場合と比較すると、約1380tもの二酸化炭素発生を抑制。地球温暖化対策につながっている。この取り組みは2021年度ウッドデザイン賞において、優秀賞(林野庁長官賞)を受賞。地域で建材、資源を循環する良質なロールモデルになると期待される。
人が行き交う都会のメインストリートに、国産木材を使った木造高層ビルが立つ風景。札幌大通りに現れたこのホテルは、22世紀の新しい街の姿を想像させてくれる。
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取材・文/後藤あや子