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林業者の取り組み

〈スマート林業の実践事例を読み解くvol.2〉 従来法とスマート検知法、どちらが効率的?

2月25日に開催された「令和元年度スマート林業構築普及展開事業 報告会」の発表資料が公表された。今回はそのなかから、和歌山地域の報告を紹介する。

「iFovea」と「きこりくん」の
実力を検証!

紀中森林組合を中心に構成された「紀中地域林業躍進プロジェクト推進協議会」が掲げるのは新4K林業(ケガをせず、効率的に、カッコ良く、稼ぐ)だ。同協議会の取り組みをまとめた報告書のなかから、「椪積みの検知・管理」のスマート化を目指した比較検証の結果を紹介したい。
 
まず「直販土場における原木検知の比較検証①」ではコンベックスと野帳を用いた「従来法」と、素材検知アプリ「iFovea」を用いた「画像検知法」が比較されている。検知の対象となったのは、スギのB材102本。計測時間は、従来法で13分24秒だったのに対し、画像検知法は11分39秒。画像検知法が従来法をわずかに上回った。材積は従来法が11.50㎥、画像検知法が11.98㎥を記録。ほぼ同等の精度を持っていることが分かる。
 
ただしポイントは、従来法の測定者が木材検知のベテランだったのに対して、画像検知法の測定者が木材検知の経験の浅いエンジニアだった点だ。測定者の技術に依存せず精度の高い検知が実施できることは、画像検知法の大きなメリットだろう。



「直販土場における原木検知の比較検証②」では、ノギスと音声入力可能なハンディ端末を組み合わせた検収システム「きこりくん」を用いた「音声入力法」と、従来法を比較した。検知の対象となったのは、スギのB材102本。材積は従来法が11.92㎥、音声入力法が11.73㎥を記録。精度は同程度だ。
 
計測時間は従来法が11分10秒だったのに対して、音声入力法は15分57秒かかってしまった。これは強風によって音声入力にエラーが生じてしまったためだ。とはいえ、音声入力法の測定者は検知の経験の浅い森林組合の育成職員だったことを考えると、十分な結果だと言えるだろう。
 
以上、報告書の結果からも「iFovea」や「きこりくん」といった、いわゆるスマート検知の技術水準は、実用化に求められるレベルを十分に満たしていることがわかる。紀中地域林業躍進プロジェクト推進協議会と同じく、新4K林業を目指す事業体は、積極的に導入を検討してはいかがだろうか。
 

DATA

一般社団法人日本森林技術協会


TEXT:松田敦

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