今注目の《発電用チップ生産》鍵握る木材破砕機、最新実演会で関心が集まったのは?
2022/01/07
今後各地で新設が見込まれる木質バイオマス発電施設。燃料用チップの生産を新ビジネスチャンスとみる林業事業体も少なくない。生産の鍵を握る木材破砕機の実演会が今秋開かれ、関連10社が最新機種などをPRした。
メイン画像:国内主要メーカーの木材破砕機や木質バイオマス発電関連機器などが一堂に会した実演会場
木材破砕機の実演会で
発電用チップ作りを披露
主催したのは林業機械の販売や修理で豊富な実績を持ち、インターネットを使った中古重機売買のプラットフォーム化にも力を入れる富士岡山運搬機(岡山県津山市)。
会場は岡山県新見市の「新見バイオマス発電所」(出力2000kw)で、施設内では富士岡山運搬機が導入を手掛けた大型木材破砕機2台が稼働している。
実演会には中国地方の林業事業体などから二日間で約200人が来場。破砕機の実演では諸岡、オカダアイヨン、緑産の国内主要3社が日本の山に適した自走式の中型機種を動かし、スギの丸太や枝条を使って発電に適した形状のチップをつくる工程を披露した。
国内主要メーカーの木材破砕機や木質バイオマス発電関連機器などが一堂に会した実演会場
各社とも原料投入口の高さが50cm以上とゆとりの設計で、チップの排出方法はシュート式とベルトコンベヤ式の2種類。チップ生産能力をはじめ、悪路での走破性や、回送時のコンパクト性など機種ごとの特徴をアピールした。
素材生産に必要なハーベスタなどの林業機械のほか、製造したチップの運搬に欠かせない箱ダンプといった運搬車両を扱うメーカーも出展。中古車を含めた豊富なラインナップに来場者の関心が集まった。
機種ごとの特徴が紹介されたチップ生産の実演
富士岡山運搬機が複数メーカーによる木材破砕機の実演会を開くのは初めて。
同社建車事業部の本田裕二取締役部長は開催の背景についてこう話す。「中小規模の木質バイオマス発電所が今後各地で増える見込みの中、チップ生産への新規参入を検討する素材生産業者から、破砕機の購入に関する相談が増えてきた」。
ヒノキ生産量が全国2位(2020年度)と林業や木材産業が盛んな岡山県では、県北部の真庭市で2015年に「真庭バイオマス発電所」が稼働。1万kwの発電能力を持つ国内有数のバイオマス発電施設となっている。
2020年5月に運転開始した新見バイオマス発電所のほかにも建設計画があるそうだ。「県内数カ所で新たに発電所建設の計画がある。今後は燃料用チップの原料となる原木の供給を比較的小さいエリアでまかなえる中小規模の発電施設が全国的にも増えそうだ」(本田部長)。
今後の課題は
国内の現場に適した
中小型機種の充実
ただ国内で販売されている木材破砕機は数千万円台の大型機種が中心で、中小林業事業者が導入しやすい中小型の流通は少ない。来場した素材生産業者からは次のような要望が聞かれた。
「海外のように平地でチップを大量生産できる現場はない。コンパクトな国産も含めて使いやすい木材破砕機の選択肢が増えてほしい」。
発電に適した一定の粒度で生産された燃料用チップ
燃料用チップの生産で重要になるのが形状の均質化だ。
新見バイオマス発電所で燃料供給を担う合同会社バイオマスサプライの立花誠至バイオマス事業部長はこのように強調する。「安定した発電を行うためには、使うチップの形状が一定であることが重要になる」。
地場産材のチップで稼働する新見バイオマス発電所
発電所で起こりやすいのが内部で燃料を送るコンベヤ部分に規格外の大きさのチップが詰まるといった燃料送達系統のトラブル。修理や点検のために発電を止めると売電もストップするため、多額の損失が生まれる。
立花部長はこう話す。「ウッドショックで丸太の引き合いが増えていることもあり、チップ原料向けの材は細い丸太や枝条が増える傾向にある。チップに加工すると燃料送達系統のトラブルが起きやすい形状になってしまう場合もあり注意が必要だ」。
発電施設の設備の種類によっても受け入れ可能なチップの形質が異なるため、チップを生産・納入する際は一定品質の確保が重要だという。
「中小林業事業者の破砕機導入をサポートしたい」と話す本田部長(左)と、新見バイオマス発電所で燃料供給を担当する立花誠至バイオマス事業部長
富士岡山運搬機では今回の出展企業に国内の現場に適した自走式の中小型機種のラインナップを増やすよう要請しており、来年度には200馬力クラスのオランダ製新機種の取り扱いが始まる見込みだ。
「購入しやすい中小型機種の選択肢が増えることが中小規模の林業事業体がチップ生産に参入する上で最も重要。引き合いが強い中古を含めて取り扱いをさらに増やし、採算性が高い事業になるようにサポートしたい」(本田部長)。
今後の木材破砕機のラインナップ充実に林業関係者の注目が集まりそうだ。
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写真・文:渕上健太
FOREST JOURNAL vol.10(2021年冬号)より転載
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