トヨタ生産方式は現場作業に適応できる? 林業現場作業が本当に参考にできる業種とはなにか論
2021/03/12
林業の現場作業が本当に参考にできる業種とはなにか。トヨタ生産方式は林業現場作業に適応できるのか。林業人材づくりのためにすべきことを、FOREST MEDIA WORKS Inc.のCEO楢崎達也氏に話を聞いた。
林業の人材づくりは
自衛隊から学べる?
「林業現場作業の効率化」が言われてかなり年月が経ちます。当然、行政指導の中心は生産性向上による生産量の増大です。僕も生産性の向上は「幸せ」のためには大事なことだと思っています(ただ、安全性向上はもっと大事)。10年ほど前になりますが、豊田自動織機(トヨタ自動車の親会社)で改善事業部長の成瀬さんのもとで修行させていただきました。トヨタ生産方式本家の考え方は、本で学んでいたことと良い意味で大きく異なっていて衝撃でした(いつか話す機会があれば)。
ただ、トヨタ生産方式に反論するつもりはないですが、工場での生産活動&生産性向上と林業現場でのそれとは、「生産管理」と言う面での原則論は当然共通しているのですが「何かが根本的に異なっている」とその時から感じていました。だって、林業現場を自動車の生産工場と同じように考えることができれば、これほど楽なことはありませんからね。
しかし、「何が異なっているのか」そして「林業現場作業が直接的に参考にできる業種はないのか」ということを考え続けてきました。2020年1月のG県による経営力向上事業による検討調査でその日は訪れました。楢崎なりの「林業現場作業が参考にできる業種」への回答、それは「自衛隊」です!「そんなバカな!?」と思う人も多いと思いますが大真面目です。以下の表をご覧ください。現場が毎回・毎日異なっている、毎日の状況判断とそれによる体制・段取り作りが求められる、訓練していても実戦では予期せぬことの連続、一歩判断を間違うと死に至る等、林業の現場作業と共通することがたくさん。
林業現場作業と自衛隊の比較
そこで、僕が考えたのは、「自衛隊の人材育成の考え方を参考にすれば、現場作業を安全に効率的に行う人材、チームワークで動ける人材を育成できるのではないか」です。「思いついたら行動」が僕の唯一良いところ(笑)で、自衛隊幹部OBで教育担当をされていた波多野さんを発掘! 研修をお願いしています!
まず、僕らはハリウッド映画の見過ぎ! 米軍内部にはとんでもない上官がおり、揉め事を発生させドンパチやっちゃうような(笑)ことをイメージしますが、波多野さんによると、自衛隊組織は論理的で人を大事にする組織だと言うことです。どうすれば末端の人材が負傷することなく任務を遂行できるのか、どうすれば現場最前線の情報を吸い上げて建設的な組織的判断ができるようになるのか、どうすれば尊敬される上官になるように教育できるのか。何度も聞きたい話ばかりで、ほんと自衛隊に入隊したくなります(林野庁にはすでに自衛隊での研修が存在、K君内部情報)。
第04号のコラムで書きましたが、林業現場作業は他の業種にはない特徴的な魅力があります。しかし、その魅力の裏返しとして、現場と班員を相手にして業務を予定通りに遂行する難しさも存在します。任務をチームワークで予定通りに遂行し、利益が出て、誰も怪我をせず家に帰れる。自衛隊の人材育成、是非、多くの方に聞いていただきたいです。
PROFILE
FOREST MEDIA WORKS Inc. CEO
楢崎達也
カナダで森林工学を学んだ後、京都大学大学院を経て、大手銀行系シンクタンクにて森林・林業部門、大手林業会社S社の山林部門勤務。現在、同社にて、森林組合の経営改善支援、人材育成カリキュラム作成・運営、森林経営管理制度実施支援、林業×メディア融合、ITソリューションの現場サイドからの設計をしている。次世代森林産業展2019プロデューサー。
FOREST JOURNAL vol.6(2020年冬号)より転載