広葉樹林は林業界の新たなトレンドとなるか? 試行錯誤の続く国産広葉樹商品
2020/10/12
木材といえば針葉樹林が主流だが、近年林業界のあちこちで広葉樹林を木材として活用する動きが見られる。しかし、この新しい試みにはまだまだ課題が残っており、様々な会社が試行錯誤を続けているのが現状だ。
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需要が増加する
国産広葉樹林
北海道南部の知内町にある株式会社ウッドファミリーは、道内の広葉樹材でフローリング材を生産しているメーカーだ。
ウッドファミリーの広葉樹の天然乾燥現場
訪れると、津軽海峡に面した工場敷地内には、天然乾燥のため積み上げられた製材の山が幾つもあった。樹種はミズナラ、オニグルミ、イタヤカエデ、クリ、セン、タモ、マカバ、そしてシラカバ……と数多い。
いずれも本州でよく売れているそうだ(販売は、グループ親会社のチャネルオリジナル)。広葉樹材は、道内7カ所の製材所から集まってくる。
人気はやはりナラ材だが、1種類に偏ると資源の減少を招くので、なるべく多くの樹種を扱うそうだ。むしろ、これまで建材にはあまり使われてこなかった材を活かすことを心がけているという。
当然、手間も増え販売にも工夫がいるが、持続的に国産広葉樹材を供給するには重要な視点だろう。
一方で家具メーカーでも、広葉樹材の確保は重要な課題となっている。家具の多くは広葉樹材を使用するが、近年では海外から広葉樹材を輸入することが徐々に難しくなっているのだ。
資源の枯渇に加えて、違法伐採による材を扱うことへの国際的な目が厳しくなってきたからだ。
木材としての
広葉樹林のこれから
そこで家具を扱うワイスワイスでは、取り扱う家具すべてのトレーサビリティを確立し、合法木材であることの証明を進めた上で、国産材への切り換えを進めている。
十分な量の安定確保に苦労したが、岩手県のクリ材のほか、宮崎県諸塚村のコナラ材から生み出す家具などを売り出している。
この村のコナラは、もともとシイタケ原木として植えられたが、近年は大木化が進んでシイタケ用に向かなくなってきた。それを家具用に使おうと考えたのだ。
北海道北部の中川町でも、町の施策として天然林から広葉樹材を切り出し、旭川市の家具メーカーに提供する事業を推進しているという。
売り先と提携して、必要量と品質を見極めながら持続的な広葉樹材生産を行っている。
岐阜県飛騨市も「広葉樹によるまちづくり」を打ち出し、製材所や家具メーカーと連携して、広葉樹商品の開発に取り組んでいる。
なかでも株式会社飛騨の森でクマは踊るは、デジタルものづくりカフェ「FabCafe Hida」を構えて外部からの人を迎え、地元の木材による家具や空間のプロデュースを手がけている。
また市内の家具メーカーも地元の国産材を利用した商品づくりに取り組み始めた。
一つ一つの試みは、まだ小さく試行錯誤の段階かもしれない。しかし、広葉樹には、新たな夢を生み出す力があるようだ。
PROFILE
森林ジャーナリスト
田中淳夫
静岡大学農学部林学科卒業後、出版社や新聞社勤務を経て独立し、森林ジャーナリストに。森林や林業をテーマに執筆活動を行う。主な著作に『森と日本人の1500年』(平凡社新書)、『森は怪しいワンダーランド』『絶望の林業』(新泉社)、『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』(築地書館)、『獣害列島 増えすぎた日本の野生動物たち』(イースト新書)など多数。奈良県在住。