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AR画面の共有で、境界明確化や森林評価の説明がスムーズに! 『OWL-AR』導入で見えた効果

サービス開始7年が経つ3次元森林計測装置『OWL』が進化を続けている。スマートグラスを通して毎木単位のデータ管理と、現地でのデータ活用をしやすくする『OWL-AR』を導入した現場の声を聞いた。

OWLの活用の幅を広げる
OWL-ARとは?

レーザースキャナにより森林現場の空間情報を3次元データとして取得。得られたデータは専用ソフトウェアを使用して解析・集計し、森林内部の詳細な情報を見える化できる。それが3次元森林計測装置『OWL』。既存の手動測定方法より3~5倍の早さで効率良く作業できること、またドローン計測ではできない森林内の高精度な測定が可能であることも特徴だ。

解析結果として、胸高直径・曲がり・樹高・材積等の立木データ、正確に配された立木の位置図や3次元立木マップ等を得ることができる。

取得したデータは専用ソフトウェア『OWLManager』で解析・表示する。オプションとして『作業道作設支援システム』や、立木の資産価値を丸太の材長・末口径として採材推定する『採材計画測定支援システム』を利用できる。
『OWL』は2023年6月末時点の販売台数が170台、海外2ヶ所を含む100以上の森林関連の事業体で使用されている。

『OWL』の詳細記事はコチラ

その『OWL』での取得データを現地で活用するために開発されたのが、今年リリースされた『OWL-ARナビゲーションシステム(以下、OWL-AR)』だ。事前に計測した森林マップの立木位置図と、林地内でLiDARセンサーを用いて取得する立木位置図を照合することで自己位置を推定して、スマートグラス上に立木情報などを表示する。スマートグラスというアイテムに注目が集まったが、アドイン研究所が狙ったのは「毎木単位のデータ管理と、現地でのデータ活用をしやすくする」ことである。

 

ユーザーは『OWL-AR』を
どのように使っているのか?

森林管理に『OWL-AR』の活用を試みている現場がある。話してくださったのは、山口県農林総合技術センターの山田隆信さんだ。

山口県農林総合技術センターの山田隆信さん

「森林所有者への境界の明確化と森林評価の説明に『OWL-AR』を活用する予定です。森林の見える化だけでなく、森林「資産」を見える化をすることで山主さんの理解が進み、森林施業集約の加速化が期待できます。
森林内で見ていただければよいのですが、高齢で山まで行けない方や県外に居らっしゃる山主さんに対しては、集会所、あるいはご自宅で通信技術を活用して山の画像と資産価値をお見せし、たとえば“このNO.1の杉が28mで、4mずつに切ればこのくらいの価格になりますよ”などと、資源量だけでなく価格提示を含めた話ができる期待ができます」。

さらに山口県では、『OWL-AR』を導入して新たな挑戦を行った。それが『OWL-AR』のハーベスターへの搭載による最適採材だ。ハーベスターのオペレーターが、現場で『OWL』の機能である『採材計画測定支援システム』のデータを見て、画面の指示通り切ることができれば最適採材が可能になる、という理屈だ。

「最適採材を実現するハーベスター用採材システムとして、『iLogger Value Bucking』がありますが、『iLogger Value Bucking』搭載機は高価ですから、既にハーベスターを所有している事業体や企業体には手が出し難い。そこで『OWL-AR』を試してみた、というわけです」。『OWL』で3次元計測して森林を見える化するところから最適採材まで、一気通貫することを目指したのだ。

ハーベスタのオペレータが「OWL-AR」を使用した際の視界

「実証試験ではハーベスターへの搭載に手間取り、1本のみしか伐ることができませんでしたが、かなり高精度であることは確認できました。一方で、ハーベスタのオペレータがスマートグラスをかけたままでの操作が困難だったので、『OWL-AR』の表示デバイスがスマートグラス以外でも対応していただければ、より現場で使えるサービスになると感じました」。

ハーベスターに搭載された「OWL-AR」

アドイン研究所には、山田さん以外のユーザーからも様々な声が届いていた。それに対応して、環境に合わせた表示方式を利用できるように開発を進めているという。今度はスマートグラスではなく、タブレット端末に表示させよう、というのだ。スマートフォンの活用も検討している。アドイン研究所の望月さんが説明してくれた。

「OWL-AR」を手にしながら説明する望月さん(写真手前)

「スマートグラス仕様でリリースしましたが、データを現地で活用するのに有効ではあるが、スマートグラスをしたまま山を歩くのが難しい、という声が届きました。そこで解決策として、表示用デバイスをタブレット端末にしようと開発を進めています。これが出来れば、例えばハーベスターに搭載して使う際にも利便性が高まります。

また、音声入力機能の搭載も有効と考えています。現地での入力が容易になるので、より林地で使いやすくなるはずです。表示端末をスマートフォンにすれば音声入力機能の搭載は容易になります」。

毎木単位のデータ管理&現場での活用を実現する『OWL』は、現場のニーズに応えつつ進化を続けている。ご興味を持たれた方は是非、アドイン研究所のウェブサイトを覗いていただきたい。

 

問い合わせ

株式会社アドイン研究所
TEL:03-3288-7835
メールアドレス:owl@adin.co.jp


取材/文:川島礼二郎

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