あらゆる業務の一元管理を実現! 林業大国ラトビアの最新鋭GISに迫る
2021/03/05
北欧のなかでも有数の林業大国として知られるラトビア。そのなかでも特に高い収益性を上げ続けている「ラトビア国有林管理公社」が使用するのが、独自の森林GIS「LVMGEO Platform」だ。その実力の秘密に迫った。
北ヨーロッパの
小さな林業大国
バルト海沿岸に位置する、ラトビア共和国。国土面積は北海道よりも2割ほど小さな6万5000平方km。それにも関わらず、針葉樹を原料とした材木シェアは世界第9位、木材を使ったプレハブ住居の輸出高に至っては世界第1位のシェアを占める林業大国だ。
そんなラトビアの森林の49%を管理するのが「ラトビア国有林管理公社(LVM)」だ。その名の通り国営企業ながら、設立の目的は、国の助成に頼らない森林経営だ。年間の売上は約370億円。林業が盛んな北欧のなかでも、最先端のICTを駆使した収益性の高い森林管理の実践で知られている。その屋台骨を担っているのが、独自に開発した森林GIS「LVM GEO Platform」だ。
あらゆる業務を
一元管理するGIS
このGISの最大の特徴は、森林管理に関わるあらゆる業務を一元管理できることだ。実際にLVMでは、地権の管理から、資源量の把握、現場管理、物流、請負業者への支払いに至るまで、文字通りすべてのプロセスをLVM GEO Platform上で処理している。
もちろん、伐採計画の作成機能やリアルタイムのマッチング機能も搭載されている。日本の林野庁もその点を高く評価して『平成30年度スマート林業構築普及展開事業報告書』のなかで、「サプライチェーンの全プロセスをサポートするLVMのシステムは、日本の林業への応用可能性が高い」と述べている。
SCM構築の
お手本になるシステム
ではLVMでは、どのように川中・川下との連携を実現しているのだろう。まず航空レーザー計測などに基づく高度な森林資源情報は川中・川下とリアルタイムで共有される。資源情報が更新されると、システムが最も効率的な伐採計画を作成。木材需要者はこの計画に基づいて、木材を購入する。施業中にもリアルタイムで林内と土場の素材量が確認されるため、購入者に対しては決められた数量が確実に納入される。これがラトビアで実現されているSCMだ。
もちろん地形が平坦であることや、林内でもネットにアクセスできることなど、日本とは条件的に異なる部分も多い。それでも日本独自のSCMシステムを構築する上で、LVM GEO Platformは貴重な先行事例となるだろう。
DATA
Vainodes iela 1, Rīga, LV-1004, Latvia
TEL:+371 67610015
lvmgeo@lvm.lv
文:福地敦
参考:林野庁『平成30年度スマート林業構築普及展開事業報告書』
FOREST JOURNAL vol.6(2020年冬号)より転載