安全と効率の両立を実現! 作業を支える林業機械のイマとミライ
2020/11/20
これまで43回に渡って森林・林業・環境機械展示実演会を開催してきた林業機械化協会。同協会の坂田幹人さんに、林業機械の最新動向と普及活動にかける思いを伺った。
林業をもっと安全に
もっと効率的に
「私たちが林業の機械化を推し進めてきたのは、林業をより安全で生産性の高い産業にしたいと考えてきたからです」。
そう語るのは林業機械化協会の坂田さん。林業における労働災害の件数は減少傾向にあるものの、発生率は全産業のなかで依然としてトップクラスだ。なかでも危険なのは伐木作業で、死亡事故の約7割を占める。
「林業機械のなかで、まず伐木系の機械が普及していったのには、そういった背景があります」と坂田さんは指摘する。
同時に人工林の多くが伐期を迎えつつある今、林業機械には高い生産性も求められる。安全と効率。そのふたつを高い水準で満たしてくれる製品として坂田さんが期待するのが松本システムエンジニアリング株式会社の「ラプトル」だ。
ラプトル/松本システムエンジニアリング株式会社
立木を伐倒し、林地から材を運び出す。このプロセスのすべてがリモコン操作で可能になった。最大で100m離れた位置から操作できるため、作業者の安全は常に確保される。
前方にクローラー、後方にタイヤを有する半装軌車両で、走破性に優れていることも魅力だ。こうした「急傾斜地への対応力の高さ」も、最新の林業機械に求められる要素のひとつだろう。
「林業の機械化は緩傾斜地をはじめとした条件の良いところから進められてきました。しかし、そのような条件の良い森林ばかりではありません。これからは急傾斜地でいかに機械化を進めるかが重要になるでしょう。例えば、ケーブルアシストを取り入れた林業機械にも期待が集まっています」。
ケーブルアシストとは、ハーベスタやフォワーダなどの林業機械をケーブルで支えることで、急傾斜地での安全な作業を可能にする技術のこと。日本と同じく急峻な森林を多く抱えるニュジーランドなどで導入が進んでいる。
「もちろん急傾斜地の伐出には架線集材も欠かせません。この分野で注目しているのはイワフジ工業の回生充電式ラジコンロージンググラップルです。荷掛け位置で木材を掴み上げ、荷下ろし位置まで運んで降ろすという工程を、AIが全自動でこなす優れものです」。
回生充電式ラジコンロージンググラップルBLG-16R/イワフジ工業株式会社
転換期の林業を
トータルでサポートしたい
こうした伐出に関わる林業機械からは今後も目が離せない。その一方で「造林に関わる林業機械が急速に進歩していることも近年のトレンドのひとつです」と坂田さん。
苗木や資材なども持ち上げることのできる運搬用ドローン、作業者の負担を軽減するアシストスーツなど、最先端技術を活用したツールが続々と登場している。
「林業は今、新たなサイクルに入ったところです。先人たちが額に汗して育ててくれた人工林を効率的に収穫し、そこで得た利益をもとに新しい森を育てていく。そんな循環をトータルでサポートしていくことが今後の林業機械の役割であり、私たち林業機械化協会の務めだと感じています」。
今年度は展示実演会が中止になってしまった分、情報発信には今まで以上に力を注いでいくという。毎年発行している『最新の林業機械』(令和2年度版)も秋頃の発行をめざして制作をスタートした。
「林業機械の最新情報を山の現場へ、山の現場のニーズをメーカーへと届ける。そんな橋渡し役になれるように、これからも活動を続けていきたいですね」。
話を聞いた人
一般社団法人林業機械化協会 専務理事
坂田幹人さん
FOREST JOURNAL vol.5(2020年秋号)より転載