高効率運搬車両も! 先進機器でバイオマス利用が充実
2019/11/20
木質バイオマス利用の先進地域であるヨーロッパでは、チップ製造や発電システムに関して有力メーカーがしのぎを削る。工場のハンドリングを改善する木材運搬機の開発も盛んに行われている。
世界最高クラスの
省エネ型チッパー
Europe Forestry社はオランダのチップ製造機(チッパー)メーカーである。
同社の製品は、チッピングやチップ排出をシンプルな機構で行えるようにしているため、エネルギー消費量を抑えて稼働できることがセールスポイント。15ℓ/時間という世界最高クラスの低燃費を実現している機種もある。
同社では、ニーズにきめ細かく対応し、質の高いチップを製造できるようにすることで、ニッチの市場を切り開くことをモットーとしており、顧客満足度は高い。
例えば、プラスチックの代替品として期待されている木質セメント板は、樹皮を含まない微細なマイクロチップが原料となるが、同社ではそのための移動式バーカーも取りそろえている。
豊富な森林資源を有する日本市場への関心は高く、同社のチッパーで製造する高品質チップを利用した木材のガス化プロジェクトの立ち上げ・参画など、具体的な戦略も構想している。
また、チッパーを現場に効率的に移送するために、車両系機械のメーカーと提携することも視野に入れている。
木質バイオマス利用を
フルサポート
イタリアのPezzolato社は、チッパー、薪製造機、簡易製材機、木材を燃料としたコジェネレーションシステムを4本柱として事業を展開している。
もともとは薪割り機の専門メーカーとして創業。現在も木質バイオマスをエネルギーとして有効活用することを基本的なビジネスコンセプトとしている。
ヨーロッパではエネルギー供給の観点から林業が非常に重視されており、特に電力供給を他国に依存している国が多い東ヨーロッパでは、再生可能なエネルギー資源として、森林の重要性が強く認識されている。
利用規模は、企業や地域コミュニティレベルから個人レベルまでと幅広く、その形態もさまざまである。
同社がチップや薪の製造から、発電と熱利用のコジェネレーションシステムまでを商品ラインナップとして取りそろえているのは、そうした多様なニーズに対応するため。
特に個人や小規模事業体向けの製品は充実しており、簡易製材システムとも組み合わせれば、製材品としての付加価値利用も含めて、森林資源を余すところなく有効利用することができる。
グローバル市場で
フォークリフトを販売
CombiLift社はアイルランドに本拠を置くフォークリフトの専門メーカーである。
同社製フォークリフトの特徴は、四方向に動かすことができること。スイッチバックなどの大きな動作が不要になるため、省スペース化が図れるほか、作業時間の短縮による省エネ・低コスト化も実現でき、作業の安全性も向上する。
顧客ごとに商品をカスタマイズすることもセールスポイント。販売先は金属業界が最大だが、木材関連業界も売上シェアが15~20%と高い。
営業エリアは、EUのほか、北米、アジア、オセアニア地域とグローバルに事業を展開している。
国別では、アメリカ、イギリス、オーストラリア、中国が主要な市場で、このほかにアジアでは、インドネシア、フィリピン、韓国などで市場を開拓。シンガポールとタイに支店を置くことも検討している。将来的には日本市場への進出も視野に入れる。
産業用運搬車両を
世界60カ国で販売
Hubtex社はドイツに本拠を置く産業用車両メーカーで、世界60カ国で販売代理店による営業活動を展開している。日本総代理店は㈱コーレンス(東京・六本木)。
同社は、木材やアルミなどの長尺物運搬車両、ガラス搬送車、ケーブルドラム・コイル・鋼材等の重量物特殊運搬車両など、さまざまな産業分野に進出。
最近では、航空産業用運搬車両や放射性産業廃棄物運搬車両の製造・販売もスタートしている。
分野別の事業シェアは、木材が20%、プラスチックが15%、鉄鋼が10%となっており、木材産業向けのビジネスにもっとも注力している。
日本市場では、多方向への移動が可能なフォークリフトの販売に力を入れている。同社のフォークリフトは、特許取得技術による独自のステアリングシステムを装備。
走行を停止することなく直行⇔横行、斜行、旋回モードの切替が可能だ。このほか、電動多方向サイドローダーや木材パネル用の自動ピッキングシステムについても、顧客の開拓を目指す。
PROFILE
林業ライター
赤堀楠雄
1963年生まれ、東京都出身。大学卒業後、10年余にわたる林業・木材業界新聞社勤務を経て99年よりフリーライターとしての活動を開始。現在は林業・ 木材分野の専門ライターとして全国の森や林業地に足を運ぶ。