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人が学ぶ・繋がる場所! 岐阜で日本初の森林サービス産業協議会、発足!

「森林サービス産業」が、岐阜県で本格的にスタートする。県単位でまとまった森林サービス産業の協議会は全国初。149者が参画する協議会の今後の取り組みと未来への展望を紹介する。

メイン画像:©岐阜県 清流の国ぎふ・ミナモ(#1153)

日本初・岐阜の取り組み
協議会の事業内容とは?

「岐阜は木の国山の国〜♪」と県歌で歌われ、8割を山が占める森林大国、岐阜県。その岐阜県で日本初となる森林サービス産業を推し進める『ぎふ森のある暮らし推進協議会が今年1月に立ち上がった。

「昨年11月に県立森林文化アカデミーで、森林サービス産業に関するセミナーを開催したほか、県内事業者の方へ協議会加入を一人ひとりお声がけしました。その結果、目標だった60をはるかに上回る149者に参画いただきました。アウトドア用品販売店から、森林組合、建設・造園、キャンプ場、アパレル、クッキングスクールまで、多種多様なメンバーで、どんな化学反応が起こるのか、今からワクワクしています」と森林活用推進課の鈴木さんは目を輝かせる。

これまで山の産業といえば林業が主だったが、林野庁・国土緑化推進機構が2019年に森林サービス産業を提唱。山で稼げる産業の例として、キャンプ場や自然体験ツアー、森林アドベンチャーなどのアクティビティが思い浮かぶが、子どもたちに向けた野外教育活動や企業研修などでの活用も目指す。


2023年1月に開催された協議会設立総会の様子。100以上の団体や企業などが集まり森林サービス産業への期待を膨らませた。

協議会や県では、今後どのような事業を行なう予定だろうか。

「ここで会員みなさんの交流が活性化され、生まれたアイデアを形にするサポートを全面的に行います。ビジネスマッチングに向けた異業種交流のほか、研修やセミナーも予定しています。」と同課の藤代さんは言う。

6月の総会後は、会員の事業内容をポータルサイトでPRし、起業支援や既存事業者支援を積極的に進める。また、本産業に取り組む上で生じる課題を解決するための相談窓口を設け、新規事業計画や経営改善計画を策定する支援も行う



森林空間をどのように使うか
県がソフト面からも支援

森林空間へのニーズは多様化している。

「たとえば、いま多くの企業でチームビルディングの取り組みが盛んとあり、森での企業研修が人気を呼んでいます。チーム全員で火起こしをする課題に取り組んだり、パチパチと薪がはぜる音を聞きながら焚き火を囲むことでコミュニケーションが活発化し、アイデア創出やビジョンの共有が行なわれます」(鈴木さん)

森林空間での森の癒し効果と相まって、チーム内の相互理解が進み、参加者同士のサポート促進や役割分担、協働、試行錯誤、主体性の発揮、さらには問題の顕在化など、チーム内での課題解決が促進されるのだという。

しかし、森を所有しているだけでは、企業研修を誘致できない。そこで協議会や県が異業種間をつなぐサポートをするというわけだ。

「メンバーだけではなく、外部の有識者や各分野の専門家とのつながりをさらに広げることで、森での企業研修のメニューづくりのサポートも可能です」(藤代さん)



森が人を呼び、人が森を保つ
目指すは「山村地域の振興」

森林整備や木材生産をハードと捉えるなら、森林サービス産業はソフト。岐阜の協議会はそのソフト面の支援を充実させていく。最後に今後の展望を伺った。

「行政としての一番大切な役割は、人が学ぶ・繋がるための場の提供です。そして目指す最終ゴールは“山村地域の振興”。森林空間での体験や環境教育などの本産業を通じて、流入人口が増え、交流人口から関係人口へ、そして定住人口になれば、いずれそれが森林保全の促進に繋がっていきます」。

全国に先駆けて6月に本格始動する『ぎふ森のある暮らし推進協議会』。岐阜で成功すれば、他県へも広く波及していくだろう。

「大きな雇用創出を目指すというより、一人二人と岐阜の豊かな森林空間に関わる人の輪が広がって、それがいずれ山村地域の振興に繋がれば嬉しいです」と鈴木さんは言う。

今後は森林サービス産業という新たな産業が、コロナ後の観光産業復興以上に、日本の一大産業として大きく盛り上がっていく見込みだ

 

教えてくれた人

岐阜県林政部森林活用推進課 森林サービス産業支援係


<藤代 凌兵さん(左)>
これまでに温暖化対策や治山事業の業務に従事、昨年4月より当係に着任。
「さまざまな人が交流し、岐阜県で新しい森の活用が生まれることと自身も参加したいという期待もあり楽しみにしています」

<鈴木 知之さん(右)>
県立森林文化アカデミーのmorinos(森林総合教育センター)で、森と人をつなぐ拠点づくりや森林環境教育推進を担当。4月より当係に就き、県全体の森に範囲を広げ森と人をつなぐことを担う。
「一拠点ではなく県内で広く支援できることに胸を膨らませています」

問/ぎふ森のある暮らし推進協議会


取材・文:脇谷美佳子

FOREST JOURNAL vol.16(2023年夏号)より転載

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