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「不採算森林、1ha=1万円で買い取ります」森も人材も育てる『青葉組』が目指すのは?

植林・育林を専門に行う造林ベンチャーGREEN FORESTERS (東京・千代田区)が、管理が行き届かない不採算森林の買い取りサービスを今年から展開している。

 

2つの森林会社が手を組み、
未来の林業を切り開く

GREEN FORESTERS(以下GF)は、森林管理専門会社の株式会社百森(本社:岡山県西粟倉村)と、ITツールを活用した先進的な造林事業を展開する株式会社中川(本社:和歌山県田辺市)がタッグを組んで2020年に設立された。現在は、植林育林専門集団「青葉組」を展開する林業ベンチャー企業だ。地域と連携した植栽から保育までの造林事業を行っている。

彼らは『青葉組』というブランドを掲げて造林事業を展開している。昭和52年に起きた栃木県旧黒羽町馬頭町(現大田原市那珂川町)の大規模火災により、45年間放置された森林の再造林などの実績を持つ。

そんな彼らが今秋から開始した新事業が不採算森林の買い取りサービス。広葉樹林や間伐遅れの放置林、伐採後に放置されている造林放棄地などの森を1ヘクタール(約3000坪)=1万円で買い取るというもの。GFの拠点となる群馬と茨城を中心とした北関東エリアが買い取りの対象となる。

 


 

企業や法人の支援を活用し、
森林の再生につなげる

令和4年度の林野庁の森林・林業白書では、日本の森林所有構造は所有面積10ha未満の小規模な森林所有者が9割を占めるという。


間伐作業など手入れが遅れてしまい、多様性も低い林が対象となる。

所有者自身の高齢化や地域外への転居などで適切な管理ができず、「放置林」や「再造林放棄地」といわれる不採算森林を産み出す。不採算森林は手入れのコストがよりかかるので、所有者個人レベルでの森の再生は難しく、ますます放置されるという悪循環に陥る。


再造林放棄地。伐採後数年間放置し、草本と灌木が優占してしまった様子。

そこでGFでは、買い取った不採森林を法人や一般企業からの支援・協賛を活用して、森林への再生や適切な森林管理につなげていく。

今回、そのメンバーとして参画しているのが、音楽家・坂本龍一氏が代表を務める森林保全団体の一般社団法人more trees (モア・トゥリーズ)。地域との協働で森林保全を行う「more trees の森」のほか、国産材を活用した商品やサービスの企画・開発、森林に関するイベント・セミナーなどを2007年の設立より展開する。

ほかにも協賛企業を複数調整中とのことで、さらなる参画企業や団体を随時募集している。

 

植林・育林に専門特化して
森も人も育てる新しい働き方

GFでは、森林再生事業のいちばんの要となる「森で働く人の育成」にも力を入れる。

なかでも植林・育林に関する人手不足は深刻で、森林再生事業に参画したい企業があっても、実行する人材やノウハウが足りないというのが現状だという。

これを打破しようと、あえて難しいといわれている植林・育林に専門特化し、新しい働き方の創造に挑戦。週休2日を廃止した3勤1休制度をはじめ、年複数回の給与改定やドローンなどの最先端技術の活用を行い、働きやすい環境をつくっている。

日本には豊富な森林資源があっても、それを育てる人材が少ない。この問題に真っ向から取り組む青葉組は、不採算森林の買い取りサービスを足がかりに、森も人も育てる新しい働き方を構築していく。

 

DATA

株式会社GREEN FORESTERS


文/後藤あや子 



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