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世界が注目!? 小笠原の厄介者アカギが高品質リコーダーに。離島経済へ貢献の可能性

アカギリコーダー、
「木材産業活性化」の象徴に


音楽家南部れいなさんによるアカギリコーダー試奏南部れいな OFFICIAL WEB SITE

「そんな折りに出会ったのがSAKUWOODの小見山さんです。彼のアドバイスもありOEDC(小笠原生態系保全に基づく開発委員会)を設立しました。メンバーは、生態系保全事業や観光事業、木工を生業とする企業や個人事業主、村議などが中心で、ここで上がった課題を民意として国に伝える役目を担っています。

加えて産業多様性が低い小笠原に、“生態系保全型の林業”的視点を取り込むことで、地元産業を多様化させ自分も成長していきたいというメンバーが多いので、ZEN-ONさんが商品化してくれることは大きな刺激になると思います」 。

今回完成したトレーサビリティがついたアカギリコーダーは、島民の誇りとなり、小笠原木材をブランディングする上での大きな自信になったという。

大半がゴミとして捨てられ、費用対効果が生まれづらかった小笠原の樹木が、このような高品質の楽器になったことに大きな感動を覚えました。矮小な離島経済に貢献し、地域の持続性を高める可能性を島民が抱けたことが一番の収穫。すでに小笠原村観光局から、ぜひリコーダーの広報の協力をさせてほしいという声も寄せられています」。



温室効果ガス排出ゼロ実現へ
大きな一歩となったアカギ


アカギリコーダーを含む2015年から続くSAKUWOODの取り組みとそのイノベーションは、「生態系保全の意義」と「日本の地域木材産業を活性化する象徴」として国にも評価されている。林野庁にて「世界自然遺産小笠原の外来樹種アカギのリコーダーを中心とした国産木材で製造された楽器の展示」が開催、SAKUWOODによる楽器の数々が一同に会した(一般公開はなし、行政と林業関係者のみ観覧可能)。

実は日本の森林は、ローズウッドやマホガニーにも匹敵する楽器に適した音響特性を持つ広葉樹が多数あることで世界から注目を浴びている。

2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」を目指すことを宣言した政府官僚の目には、SAKUWOODブランドの楽器はどのように映るのだろうか。

「排出を全体としてゼロにする」には、二酸化炭素の排出量から植林・森林管理などによる「吸収量」を差し引いて、合計を実質的にゼロにすることを意味する。ゼロにするための解決策の一つの象徴として評された小笠原アカギのリコーダーである。

地球上には個性豊かな多様な生物が存在し、食材の供給や地球環境の維持など互いに影響しながらバランスを保って共存している。私たち人間は自然の一員として多くの恩恵を受けておきながら、開発等によって生態系を破壊し、生物多様性を脅かす大きな要因となってきた。

しかし、これからはただ自然の恩恵を享受するだけでなく、小笠原グリーン株式会社と同様、積極的に自然環境を保全する活動を行う必要がある。

今回完成したアカギリコーダーが国から評価されたことで、太古から私たち日本人の魂に眠る森林哲学を目覚めさせ、持続可能な多様性ある社会実現への第一歩となったことは間違いないだろう。

PROFILE

楽器職人

竹山木管楽器製作所

竹山宏之さん

アカギリコーダーの製造を担う。


小笠原の生態系保全

小笠原グリーン株式会社

横山浩一さん

外来樹木アカギの伐採・駆除、小笠原固有種と在来種の森林再生と環境保全活動を行う。


プロデューサー

一般社団法人創造再生研究所/
SAKUWOOD 代表

小見山將昭さん

音楽プロデューサーとして活動した経験から、楽器に使用されている木材に着目。


楽器メーカー

ZEN-ON(株式会社全音楽譜出版社)
楽器事業部

河村秀教さん

小見山氏の取り組みに賛同、アカギを使用したコンソートシリーズのリコーダー制作を開始。


文:脇谷美佳子

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