中国地方で初導入の自走式タワーヤーダの実力は? 架線集材の実演会をレポート!
2022/12/27
クローラーで自走し、荷揚げ能力と架設・撤収のスピーディーさが支持されるタワーヤーダ「KMR4000U」。岡山県内で実演会が開かれ、日本の搬出現場に合わせて設計された最新機種を林業関係者などが体感した。
作業索の架設を自動&省力化
遠隔操作で荷外しも安全に
「KMR4000U」はコンラート社が日本向けに開発したフラッグシップモデル。最大4トンの荷揚げ能力を誇りながらも、簡単に設置でき、幅員約2.2メートルのコンパクトな設計も特徴だ。
タワーの展開や格納、主索やメインラインなどの張り上げや調整をリモコン操作で自動化することで、架設作業の大幅な省力化を実現。さらに作業索のドラムを車体内部に収めるなど、安全性へのこだわりも徹底している。2021年6月の国内初上陸後、すでに全国で7台が活躍中だ。
中国地方で今夏、初導入したのは岡山県北部を拠点とし、架線集材で豊富な実績を誇る株式会社森淵林業(岡山県津山市)。実演会はコンラート社製品の国内輸入総代理店である株式会社サナース(横浜市)と、中国地方でコンラート社製品の販売やアフターサービスを手掛ける株式会社アクシア(岡山県倉敷市)が共催し、中国地方を中心に2日間で約140人の林業関係者が参加した。
実演会場の様子。
実演会場は森淵林業が列状間伐と搬出を手掛ける樹齢約40年生のヒノキ林。高さ10.8メートルの「KMR4000U」のタワー部分から、小さな谷を隔てた先山まで延長約370メートルの主索を張り、コンラート社製の高性能搬器「リフトライナー」で全幹集材後、ハーベスタで造材する工程が披露された。
実演会のスタートは午前中の作業終了後に緩めて地面に降ろしていた主索と搬器、メインライン、ホールバックラインを再び張り上げる作業から。森淵林業の森淵百合明社長が専用のリモコンを操作すると、3本のラインが適切な張力に達するまで自動制御でスムーズに張り上げられていった。
「KMR4000U」の操作を行う森淵百合明社長。
張り上げ完了を確認した森淵社長は、コンラート社製の高性能ハーベスタヘッド「WOODY50」を搭載した0.45㎥クラスの重機に、「KMR4000U」のリモコンを持って乗り込みスタンバイ。
先山の荷掛け者によって玉掛けされたヒノキ全幹材をリモコン操作のリフトライナーで土場まで引き寄せると、「ルードヴィッヒ社製 リモコン解放式チョーカー」を使い、重機に乗ったままリモコン操作で手早く安全に荷外し。先山に搬器を送り返すと、間髪を入れずに造材作業に入っていった。
先山からヒノキ全幹材を土場まで引き寄せる。
一回の搬器の往復で土場に集められる全幹材は4~5本。これが搬器の到着から3分程度ですべて3メートル材に造材される。そして間を空けることなく、次に送られてきた全幹材の造材に入っていく。
タワーヤーダ―「KMR4000U」で全幹集材後、ハーベスタ「WOODY50」で造材。
先山の荷掛け者と、搬器を操作するハーベスタのオペレーターの2人だけで集材と造材が流れるような動きで進む光景に、来場者からは「高い生産力に驚いた」と声が上がった。ハーベスタで玉切りする場所が直接、はい積みになるため、材を並べ直す手間がないのも特徴だ。
急傾斜の奥山での活用も視野
現場目線の安全機能も高評価
森淵林業2代目の森淵社長がKMR4000Uに着目したのは5年前。 森淵社長はタワーヤーダーの使用経験が今まで無かった。フィンランドへの林業視察で、コンラート社による日本向けタワーヤーダの開発情報を耳にしたのが最初だったという。
森淵社長は「タワーヤーダの導入では、トラック積載型も含めて幅広く検討しましたが、走破性が高いクローラ型の開発計画を聞いて『買いだな』と思いました。従来のトラック搭載型のタワーヤーダでは傾斜が強い奥山など、搬入が難しい場所が多いためです。リフトライナーとの組み合わせによるパワフルな荷揚げ能力や、作業索のドラムを車体の中に収めているなど安全性の高さも考慮しました。とくにリフトライナーは吊り過ぎると自動で荷重を逃がすドラグ機能が付いている点も安心です」と話す。
森淵林業 森淵百合明社長。
「KMR4000U」のもう1つの特徴である架設・撤収の省力化については「従来の架線集材だと架設に調整を含めて4日、撤収に2日掛かっていました。『KMR4000U』は先行導入した事業体からは、慣れれば半日で架設して、2時間で張り替えができると聞いています。今後は大幅な省力化につながると思います」と期待を寄せた。
高性能ハーベスタと好相性
「価格以上の価値がある」
森淵林業は「KMR4000U」の導入に先立ち、コンラート社製の高性能ハーベスタヘッド「WOODY50」を5年前に導入。0.45㎥クラスのベースマシンに装着して素材生産現場で活用してきた。「WOODY50」はローラー部やグラップルの作動圧力、測長の開始などを電子制御で最適化させたほか、径級測定や測長も従来機より高精度化。さらに通常のメインソーとは別に、二股材などの造材に便利なトップソーを搭載するハイスペックマシンだ。
ハーベスタヘッド「WOODY50」。
参加者との質疑で森淵社長は「最新のタワーヤーダや搬器を使う集材では、生産効率は造材スピードに左右されます。「WOODY50」は腕くらいの太さの枝なら問題なく枝払いでき、玉切りも直径50センチほどまで可能。だから重機から降りてチェーンソーを使ったことはありません。またグラップルとして使う際は、ヘッド部分をチルトアップさせて丸太と干渉しにくいポジションに設定できるなど、グラップル機能の使用感もいい。価格は決して安くはありませんが生産性と機能で選びました」と説明した。森淵林業は0.25㎥クラスのベースマシンに適合する姉妹機「WOODY40」も来年春に導入予定だ。
「日本の山」にベストマッチ
アフターサービスは地元密着で
皆伐や搬出間伐では、急傾斜地や奥山といった悪条件の現場が増えつつある。中国地方でも同様だ。森淵社長は「特に山陰地方は作業道の作設が難しい急傾斜の山が多い。そんな急しゅんで手を付けにくい山での施業に道を開くのが『KMR4000U』だと思います。アフターサービス体制もしっかりしているので今後、中国地方でも活躍する現場が増えそうです」と展望する。
「輸入機械はメンテナンスや修理対応に不安を持つ方も多いですが、提携している地元の機械屋さんのご協力も得ながら基本即日対応で地元密着型のアフターサービスを展開していきます」と中国地方でアフターサービスを担当する株式会社アクシア 環境部営業担当の鳥羽健一さん。
株式会社サナース 営業部の副島龍太さんも「KMR4000Uとリフトライナー、オートチョーカー、そしてWOODY50の組み合わせは中国地方を含めた日本の山で最強の組み合わせだと自信を持っておすすめします」と話す。
機器の説明を行う、アクシア環境部 営業担当 鳥羽健一さん(写真奥)。
ヒノキ生産量が全国1位の岡山県。その中でも森淵林業がエリアとする県北部は高品質な「美作ヒノキ」の産地として名を馳せる。森淵社長含め、スタッフ4人で年間5000㎥を出材する少数精鋭の同社。
「KMR4000Uやリフトライナーの導入で素材生産をさらに強化するとともに、講師を担当している各種林業研修の場でも今回のシステムを紹介していきたいです」。青空に向けて力強くタワーを伸ばす『KMR4000U』を頼もしそうに眺めながら、森淵社長は日に焼けた笑顔を見せた。
株式会社森淵林業、株式会社アクシア、株式会社サナースの皆さん。
問い合わせ
取材協力:株式会社森淵林業
文:渕上健太
写真:松尾夏樹
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