危険を伴う仕事だから「作業計画」が大事。本当の意味での「計画」を考えてみませんか
2022/05/04
よく聞く用語の「段取り8割」「PDCA」。林業業界では、義務づけられた「計画」作成が多いあまり本来の「計画」を見失っている、と経営支援のプロ・楢崎達也は語る。改めて考えたい、本当の「計画」とは?
大事な「進捗管理」における
目標、作戦、ノルマ =「計画」
僕の会社の岐阜大と宇都宮大インターン生4人はこの春から新社会人。僕でも知っている立派な会社に就職。彼らの夢溢れた人生計画を聞くと、受験・就職活動に大失敗のおっちゃんは「そう甘くないんだよね~」と上から目線のいじわるなアドバイスで迷惑がられている(ごめんね~)。
みなさんは、「計画」することが好きですか? 旅行の計画、欲しいものの購入計画、趣味のスキルアップ計画等、前向き計画もありますし、人生計画、仕事の計画のように失敗したくない慎重になる計画もあります。僕の知り合いには「楢崎君ほどでたらめな無計画な人生の人も珍しい!」と言われます。ま、初就職は29歳ですのでね(笑)。
田舎の造園業の家庭に生まれ、大学受験にも大失敗したので「オラ、こんな村イヤだ」と思い、都会生活を目指しました。低能力の僕は人生のその時々に自分なりに「ここまでは行きたいな」という目標を立てて、その目標に近づけるよう作戦を立て、自分にノルマを課しました。
作戦失敗で達成できなかった目標もあります。経済的理由や能力的にやれなかったノルマもありました。今でもその目標を達成できていたら、人生が違っていただろうと思います(信州大学には受かりたかった!)。
僕は組織的に行う仕事も同じだと考えています。会社が実施する事業を経営者(管理職)が従業員一人一人に役割を振り分け、到達目標を示し、目標実現のための作戦とノルマを与えることで目標達成を図るのです。
目標が達成できれば、会社は儲かり、その利益が従業員に還元され、従業員も幸せ、その家族も幸せ(売上が存在しない行政やその関連団体はちょっと違いますが)。
林業現場作業では「進捗管理」が重要です。本誌vol.6で書いたように、現場が毎回違うし、毎日状況が変化する林業の進捗管理においては、ちゃんと記入されていてパソコンでデータ管理されていれば日報が、日報を形式的につけているなら上司への口頭報告がとても重要となります。
ここまででお気づきだと思いますが、「進捗管理」については、日報をつけることよりももっと重要なことがあります。それは、人生設計と同じで、その事業・活動の「目標」と「目標達成のための作戦」と「ノルマ」を設定することです。言い換えると「計画」することです。
楢崎がこの話をすると「計画立ててもどうせその通りにいかないんだから。楢崎さん、これは林業なんですよ」と言われます。まあ、その通りです。ただ、計画がなかったら、うまくいきようがありませんよね。実際、ほとんどうまくいっていませんよね。正確に言うと、日報を従業員につけさせてもうまくいっているのかどうか判断すらできないですよね。
使い古された用語に「段取り8割」「PDCA」があります。
林業業界には作成が義務づけられている「なんとか計画」がとても多くて、その計画づくりに奔走するあまり、本来の「計画」とはなにかを見失っている気がします。ICT時代に日報システムアプリづくりも大事ですが、「計画」とは何かを考えてみませんか(この原稿も期日の前日にコメダ珈琲で書いてる。計画は時につらいものなんです〜)。
PROFILE
FOREST MEDIA WORKS Inc.
CEO
楢崎達也
カナダで森林工学を学んだ後、京都大学大学院を経て、大手銀行系シンクタンクにて森林・林業部門、大手林業会社S社の山林部門勤務。現在、同社にて、森林組合の経営改善支援、人材育成カリキュラム作成・運営、森林経営管理制度実施支援、林業×メディア融合、ITソリューションの現場サイドからの設計をしている。次世代森林産業展2022プロデューサー。