疑似体験で労働災害の未然防止を! VRによる世界初の林業労働災害防止講習とは?
2020/04/30
チェンソーによる伐木作業の安全講習はいまだにテキストによる教科書学習が中心。そんな状況を解決するのが、仮想空間で伐木に伴う労働災害を疑似体験し、労働災害の未然防止をはかることを目的に開発された「林業労働災害VR体験シミュレーター」だ。
世界発! VRによる
林業労働災害防止講習
林業界でもスマート化に向けた動きが加速している。しかし、チェンソーによる伐木作業の安全講習はいまだにテキストによる教科書学習が中心。理解はできてもイメージができない、そんなデメリットを解決するのが「林業労働災害VR体験シミュレーター」だ。
「伐木現場の労働災害をなくしたい」という想いから開発され、日本だけでなくスイスやドイツなど海外の林業従事者約3000人に対する「労働環境を良くするためには」というヒアリングをもとに製作した。パソコンに災害事例のソフトをセットし、ゴーグルを着用。チェンソー一体型コントローラーを使いながら3D空間で体験する仕組みだ。
体験できる事例は、かかり木処理中の元玉切り、つるがらみによる背面からの倒木など全種類。毎年2つずつ事例が拡充されている。倒木のスピードなど実際の災害状況を高い再現度で体験できるため、新規就労者は現場に出る前に室内にいながら経験を積むことが可能だ。
屋内研修会での使用例
疑似体験がもたらす
気づきとコミュニケーション
講習の流れとしてはまず、現在の労働災害の説明を受け、災害事例の写真や動画を視聴する。次に、VRシミュレーターの体験を通し、グループワークを行う。体験した災害を、「個人として」「チームとして」「組織として」どのように防ぐかという3つの議題について話し合い、結論を出す。それを全体で発表し合い、安全への気づきを共有する。
林業経営体に よる林業労働安全講習会
講習自体は従来のイラストによる教材でも可能だが、疑似体験を行うことで得られる効果には、ベテランと新規就労者のコミュニケーションもあると取締役の石山さんは言う。
「疑似体験は、実は若い人よりベテランの人の方が怖がられます。若い人はゲームなどで慣れていることもありますが、経験が少ないことも理由です。ベテランの人はかつて体験した危なかったことや、実際に目の当たりにした事故を思い出して恐怖感が沸くのです。思い出した話を若い人に語り継ぐことで交流が生まれ、現場での声掛けなどのコミュニケーションに繫がります」。
シミュレーション映像(上、伐採現場 下、伐木の状況)
防護服を着用していても、どんなに熟練した人でも、完全に事故を防ぐことはできない。災害を防ぐ最も基本的で重要なことは、つまるところ作業者同士がお互いを気にかけていくことなのかもしれない。
現在はレンタルのみの提供だが、今年の6月よりスタンドアローン型の製品の販売を開始する。ゴーグルをかけるだけで簡単に体験できるため、全国への拡大が見込まれる。
VR体験シミュレーターで身につく安全のこと
・新規就労者の経験不足を補える
・ベテラン作業員が安全な作業手順について確認できる
・疑似体験を通して具体的な対策のイメージを共有できる
DATA
仮想空間で伐木に伴う労働災害を疑似体験して、その体験を現場で生かすことで、労働災害の未然防止をはかることを目的に開発された。従来の労働災害の教材はイラストを中心としたテキストが多く、災害のあらましは理解できても記憶や気持ちへの定着が薄いという問題を解決できるとして注目されている。
<利用方法>
期間:最長5日間
(1日目はオペレーターによるセットアップや使い方のレクチャーが必要)
料金:1日目 ¥54,000(オペレーターつき)、2日目以降 ¥10,000(オペレーションが必要な場合は¥34,000)
※別途オペレーターの旅費、返送費用あり。
問い合わせ
株式会社森林環境リアライズ
TEL:011-699-6830
FOREST JOURNAL vol.3(2020年春号)より転載