北軽井沢の人気キャンプ場から発信! 山からはじめる産業革命「あさまのぶんぶん」とは?
2021/08/24
年間10万人が訪れる「北軽井沢スウィートグラス」を経営する有限会社きたもっく(本社:群馬県長野原町)は、地域の山林を活かした6次化にも積極的に取り組んでいる。今年7月には製材所を備えた新工場を竣工。“地域未来創造企業”として地域を盛り上げていく。
キャンプ場から生まれた
山の6次化事業
多彩な宿泊施設とイベント、スタッフの温かいもてなしで、アウトドア誌の読者アンケートでは日本一のキャンプ場として何度も選ばれている「北軽井沢スウィートグラス」。ここを展開する有限会社きたもっくの代表取締役・福嶋誠氏は長野原町出身。都内での起業を経て、父が所有していた土地を受け継いでキャンプ場を1994年にオープンした。
2012年から冬季営業を行い、薪の需要が増えたのを機に、薪の製造販売「あさまの薪」を2015年に発足する。2019年には遊休山林などで養蜂を開始、2020年は240haの地域の山林を取得し、自伐林業にも着手。そして今年7月、日本一の流通量を目指す薪の製造を柱に、建材や家具、蜂蜜などを生産する新工場「あさまのぶんぶんファクトリー」を竣工した。
北軽井沢スウィートグラス
地域の木材を無駄なく価値化!
あさまのぶんぶんファクトリー
きたもっくでは、現在、240haの自社所有林での伐採や山林管理のほか、地域の残材と木材廃棄物の回収と合わせて、年間約1900トンを取り扱っている。このうちの大半が薪として製品化されているが、新工場にはイタリア「pinosa」社の薪の製造ラインを開設予定。日量100㎥以上と国内トップクラスの生産量を見込んでいる。
薪の生産だけでなく、北軽井沢特有の広葉樹材を家具や内装にも活かそうと、町では約40年ぶりとなる製材所を新工場内に復活させる(11月稼働)。薪と木材の乾燥には、廃材を活用する薪ボイラー式高効率薪乾燥機を自社開発。寒冷地での広葉樹薪の乾燥は通常18ヶ月ほどかかるところを予備乾燥6ヶ月+強制乾燥2日まで短縮できる。この薪乾燥機の排熱は建材や家具材の乾燥を加え、年間2.2トンの採蜜量という蜂蜜の越冬保管に使われるなど、地域の山林資源をあますことなく活用する。
あさまのぶんぶんファクトリー外観
廃材を活用する薪ボイラー式高効率薪乾燥機
生産から消費まで、
35㎞圏内で自給自足を図る
きたもっくが想定しているのが、生産から消費までを一貫して35㎞圏内で行う、森林資源の地産地消だ。これまでの都市一極集中から脱却し、これからの地方分散型の社会システムの転換を見据えてエリアを限定し、循環型の地域資源活用事業を推進する。こうした地域の未来を創造するしくみをひとつの社会モデルとして実践・提示するのが、「あさまのぶんぶん」こと、山からはじめる産業革命である。
彼らの合言葉は The future is in nature(未来は自然の中にある)。フィンランド語で「ルオム(自然に従う生き方)」の精神に根差したものである。国土のおよそ3分の2が森林でありながらも、その資源をうまく活用できていない日本にとって、きたもっくの取り組みが未来の明るいシナリオを描いてくれそうだ。
蜂蜜
養蜂
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取材・文:後藤あや子