林業×アート、異色の融合! 林業知識を活用し、新領域を創造する「ディレクターコース」とは
2025/04/28

みえ森林・林業アカデミーのディレクターコースでは、研修生が企画から実行まで挑戦し、林業の枠を超えた新たな発想を形にしている。「林業大学校の芸大」とも称される、その多彩なプロジェクトと熱意あふれる学びの場とは? 経営支援のプロ・楢崎達也の連載コラム「次世代林業Lab」。
林業大学校の芸大、
ここに爆誕!
ここ数年、有名絵画にハマっています(ミーハーだから)。昔からよく分からないなりに海外の有名美術館に行ってピカソだ、ゴヤだ、ダリだ、ベラスケスだと言って、テキトーに見て回ってました。ここ数年はさらに鑑賞にハマり、有名美術展に行くだけでは飽き足らず、子供向け絵画教室に行って油絵で有名な絵のパクリ画を描いています(笑)。「どうして学校で油絵を教えてくれなかったんだ!僕の芸術が爆発せん!」と日々、恨む毎日です。
2月末に、「みえ森林・林業アカデミー」(太田猛彦学長)の「ディレクターコース」の締めくくりのプロジェクト発表会を見せてもらいました。このコースは、全国でも珍しい社会人向け2年間コースで、1年目は講義で全国からの業界を代表する方々の講義、2年目は、講師と研修生みんなで議論してプロジェクトの企画、検証、実行(製作)までを実施することが課せられてます。
数年間から大変人気で、定員5名に対して常にそれ以上の応募があり、研修生も当初想定した林業会社の職員だけでなく、製材企業職員、スチール家具会社職員、自治体職員、設計会社職員、木工デザイナー、造園業、地域づくり会社、NPOなど、ド林業以外のさまざまな分野から受講生が集まってます。申込み者が殺到らしく令和7年度より、定員を10名に増員!
さらに驚くべきことは、応募者の約半分は三重県外者! そして、プロジェクトの内容が多種多様で大変、面白い!
今年度の発表内容は、林業を題材としたマンガ作成、NFTを活用した森林づくり、メタバース森林の検討、ECサイトづくり、備長炭マーケティング、森林購入業務の改善、生物多様性に富んだ自社有林づくり。過去には、林業PR映像作成、仏壇に備える樹種マーケティング、アロママーケティング、鎮守の森を活用したイベント開催等、書ききれません。
発表後に、アカデミーの速水特別顧問(速水林業代表)がコメントされていました。「アカデミー設置に際して三重県知事の前で『林業大学校の東大を作ります!』とうそぶいたヤツがいたが、結果的に林業大学校の芸大ができちまった。(笑)」
「林業大学校の芸大」とはまさしく名言!
林業の学校では、林業を追求することが当然です。ただ、「林業の追求」は考え方の方向性的に「森づくりの理論」、「効率的な林業とは」とどちらかというと内向きになりがち、教える内容はこれまでに積み上げてきた蓄積情報に頼りがち、ワクワク感少なめです。(何を差し置いても「林業労働力」が必要だということは理解します。)
でも、僕ら林業業界が今の時代に無意識に求めているのは、林業を核として、林業業界の外にある新たな分野に向かって飛び出し新しいものが創造されること。欲を言えば新たなビジネスが生み出されることなのではないでしょうか。
「ディレクターコース」は、研修生に(講師にも?)、修了までに企画を実行に移して成果を見せないといけないという大変な試練を課すので脱落する人もいるようですが、研修生による「思いを具現化した」感動の成果を目の当たりにしました。
日本唯一の「林業大学校の芸大」(笑)。これからも成果を楽しみにしたいです!
●ディレクターコース2年目のプロジェクト最終発表一覧
PROFILE
FOREST MEDIA WORKS Inc.
CEO
楢崎達也
カナダで森林工学を学んだ後、京都大学大学院を経て、大手銀行系シンクタンクにて森林・林業部門、大手林業会社S社の山林部門勤務。現在、FOREST MEDIA WORKS Inc.にて、森林組合の経営改善支援、人材育成カリキュラム作成・運営、森林経営管理制度実施支援、林業×メディア融合、ITソリューションの現場サイドからの設計をしている。次世代森林産業展2024プロデューサー。
FOREST JOURNAL vol.23(2025年春号)より転載