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林業者の取り組み

選ばれる職場のつくり方とは?「経営理念」と「行動規範」を設置して理事と従業員の意識を統一へ

2001年、立ち行かなくなった地域の事業協同組合の製材所経営を引き受けたことをきっかけに、「組織経営」を意識するようになった温海町森林組合。「経営者」と言う立場がない組合において、どのような努力がなされたのか。

POINT01

組織経営のための
「経営理念」「中期経営計画」
公式な「数値目標」の設定

温海町森林組合では、鈴木伸之助参事(当時、現専務)が中心となり、2013年度より「第一次中期経営ビジョン・経営計画」を策定し、積極的な組織経営をスタートさせた。これにより、次の5年間、何に集中して経営を行うのか、従業員にはどのような努力を求めるのか等を明示した。その結果として、月給制に移行した後も、豪雪地帯にも関わらず、年間生産量を伸ばしてきた実績がある。

経営理念(社会的使命、行動規範)

経営方針(経営の目的・方向)

経営ビジョン(5年後のなりたい姿・形)

事業領域ごとの目標



POINT02

現場従業員も完全月給制
組織経営への参加を促す

温海町森林組合では、現場従業員も含めて完全月給制を取り入れている。月給制を取り入れる事で、従業員は、日給制と違い、給料の手取りが安定することになる。また、組織としては、日給制の従業員には社員教育(人材育成投資)を行いにくいが、月給制の従業員に対しては社員教育を行えるようになる等、従業員にも組織経営に参加してもらいやすくなる

一方で、経営側には、月給を決めるための給与表の作成、賞与の体系化、人事評価の仕組みの構築が求められることになるが、参事(現専務)を中心にコツコツと構築してきた。

月給制導入

・給料が安定する
・現場従業員が経営に参加しやすくなる
・人事評価の仕組みが必要となる



POINT03

成長を支える
「経営参加型」人材育成

温海町森林組合では、育成したいリーダーを定義し、そういった人材が育成されるような組織づくりを行っている。

温海町森林組合が理想とする
班長(リーダー)像の定義

班員に仕事の手順や方法をきちんと伝え、その方向性を共有させ班をまとめていく事が理想とする班長の姿である

班長・副班長に期待する主な役割
●班の人々が対話を通して共感し合い、心が繋がり、自ら本気で仕事ができる環境を作る
●現実をつぶさに観察し、班員や現場状況の変化に気付く
●プランナーと班長を中心として、生産量・生産性等の現場ごとの数値目標を設定

温海町森林組合の職場のつくり方
●組織経営のための理念・中期計画・数値目標
●現場従業員の月給制導入による経営への参加意識強化
●成長を支える「経営参加型」人材育成

DATA

温海町森林組合
山形県と新潟県の県境の日本海沿に位置している。従業員数28名。約10年前から現場技術者を完全月給制に移行した後も素材生産量を伸ばし、現在では3班体制で2万㎥/年の生産量。トップダウン型の経営をやめ、現場技術者も含めて全員で話し合いながら全員参加の経営を行なっている。

住所:山形県鶴岡市大岩川字木揚場8 
TEL:0235-43-2313

筆者PROFILE

FOREST MEDIA WORKS Inc. CEO

楢崎達也

カナダで森林工学を学んだ後、京都大学大学院を経て、大手銀行系シンクタンクにて森林・林業部門、大手林業会社S社の山林部門勤務。現在、同社にて、森林組合の経営改善支援、人材育成カリキュラム作成・運営、森林経営管理制度実施支援、林業×メディア融合、ITソリューションの現場サイドからの設計をしている。次世代森林産業展2019プロデューサー。


FOREST JOURNAL vol.8(2021年夏号)より転載

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