機械・ツール

STIHLプロダクトマネジャーに訊く! “持続可能な林業”をかなえる製品開発への想い

世界初のインジェクション搭載チェンソー『MS 500i』を生み出したSTIHL。それは高性能化を追求した結果ではなく「持続可能な林業に寄与する」という、STIHLの想いだった。

構想は20年以上前!
『MS 500i』は夢の1台

1926年に工業大国ドイツで創業した世界的な老舗メーカーSTIHL。

チェンソーブランドとしての販売台数は世界No.1を誇っており、高性能かつ高品質な製品が世界中で広く愛されている。

近年は持続可能な林業に寄与すべく、排出ガスを出さないバッテリーツールにも力を入れており、その魅力は林業界に留まらず、農業や造園業、さらには一般にまで知れ渡りつつある。

そんなSTIHLの次世代機として登場したのが『MS 500i』だ。

キャブレターを電子制御するM-Tronicから更に進化して、遂にキャブレターを廃してフューエルインジェクションを搭載。これは世界初の偉業である。


STIHLの最新モデル・MS 500i。

この夢のようなチェンソーは、一体どのようにして生まれたのだろうか?

STIHLのプロダクトマネージャーである相信さんが教えてくれた。

「私が入社したのは1999年ですから、もう20年以上も前の話です。実はその頃、既に本社開発陣の頭には、『MS 500i』の原型となるコンセプトモデルがあったのではないかと思っています。そのコンセプトモデルのイラストが、当時の弊社オフィスに飾られていたことを覚えているのです。

詳細なスペックこそ記載されていませんでしたが、『始動がスイッチ一つで簡単にできる』、『圧倒的なパワーと加速性』、そして『人間工学を活かしたデザインだから使いやすい』などなど、『MS 500i』に繋がる特徴が描かれていました

昨年末にヨーロッパで『MS500i』が発売されたとき、私はこのイラストを思い出しました。1999年にはイラストだったあの夢のモデルが20年後に製品化されたのだと思うと、感慨深いものがありました」。

『MS 500i』は既存ラインナップをブラッシュアップした単なるモデルチェンジ機ではない。

インジェクション化による高出力と高加速、それに始動性の良さがウリになってはいるものの、インジェクション化した背景には排気ガスを減らし環境に配慮することで『林業を持続可能なものにする』という同社が掲げるコンセプトがある。

「実は日本では、チェンソーなどのエンジン式ハンドツールには排出ガスの法律が存在しません。ですから、安価な輸入品など、排出ガス規制があるヨーロッパでは販売できない製品が数多くあります。

排出ガスを気にする必要がなければ開発コストも少なくてすみますし、生産も簡単かつ安価に行うことができます。高出力化も容易です。

でも本当にそれで良いのでしょうか?自動車メーカーは必死になって排出ガスを削減していますし、建機や農機の世界では、日本メーカーも欧米の規制に対応した製品を作っています。

私達STIHLは、日本の林業も持続可能なものにしたいと考えています。『MS 500i』には、そうした弊社の想いが込められているのです」。

持続可能な林業を支える
STIHLブランド

STIHLのコンセプトについて言えば、その品質へのコダワリも並外れている。相信さんは続ける。

「残念なことに、一般のユーザーの方では気付かないような部分にこそ、コダワリが隠されているのです(笑)。エンジン一つ取ってみても、他社製品とは隔世の感があります。

鋳物部品の厚さや補強リブの入れ方、それに表面処理や加工など、外からは見えない細部にまで丁寧に作っているのです。STIHLらしさの一つのハイライトが人間工学を活かしたデザインだとすれば、こうしたディテールにも手を抜かない設計・生産をベースにした高品質は陰になってユーザー様を支えます。

弊社では新商品を開発するとき、必ずプロトタイプを用いて複数のモニターテストを実施します。実際のフィールドでの性能を確かめるだけでなく、多くの場合、モニター様の声を商品にフィードバックしています。

この作業に3年以上を費やすことも珍しくありません。ユーザー様の声を大切にした物づくりを心掛けているのです」。

STIHLブランドを支える3つのコア

Leading
創業者アンドレアス・シュティールの精神に基づき、新しいアイデアや技術、品質を不断に追求し続ける姿勢を意味する。

Powerful
STIHL製品が、ユーザーのニーズに応え、業務遂行を可能にするパワフルな道具であることを示す。

Sustainable
私達の暮らしの基礎となる自然環境に配慮して、持続可能性を追求することを意味する。


また、STIHLでは完成した製品を一つ一つ運転して確認する全数検査を実施している。その検査を通ったものには刻印が押されて、後からでも誰が検査したのかが分かるようになっている。

これには責任の明確化という意味もあるが、社員が一つ一つ組み立てて検査した、というプライドの証でもあるのだ。


品質でも他を圧倒するSTIHL。生産された製品は全て試運転して検査する。相信さんが指しているのが検査を通過した製品に押される刻印だ。

「ヨーロッパにおいては、林業はカッコいい職業の一つとして認識されていますが、残念ながら日本は、まだまだそうではありません。

日本の急峻な山での作業は過酷で、自然を相手にする非常に厳しい環境です。林業従事者もなかなか増加しません。ただ、私達STIHLは、そんな日本の林業を変えて行きたいと願っています。

そのための一つのツールとして『MS 500i』は生まれました。ハイパワーで始動性が良いから、より効率的に、安全に、それにカッコよく作業を行えます。

そしてその排出ガスはヨーロッパ最新の規制に適合するものす。STIHLが『MS 500i』に込めた持続可能な林業の実現への想いが、これからの日本林業の未来を担う人達に伝わってくれれば、それに勝る幸せはありません」。

話を聞いた人

株式会社スチール
マーケティング部プロダクトマネジャー
相信武司さん

東京農業大学で林業を学び1999年にSTIHLに入社。現在はプロダクトマネジャーとして活躍している。STIHL製品の知識とSTIHLへの愛は本邦随一だ。

問い合わせ

株式会社スチール

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Text:Reggy Kawashima
Photo:松尾夏樹(大川直人写真事務所)
Thanks to:下仁田町森林組合

FOREST JOURNAL vol.1(2019年秋号)より転載

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